

COVER STORY

目次
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DeFiの地鳴り
暗号資産熱狂の背後で脈打つ新たなるパラダイム
熱狂的なBitcoinの価格高騰が続く裏側で、暗号資産(仮想通貨)の未来を託した新しいプロジェクトが注目を集めている。あらゆる金融サービスを人手や組織を介さず、ブロックチェーン技術を活用して自動化することを狙った「DeFi(分散型金融)」である。
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くびきからの解放
改正銀行法が取り払う〝他業規制″の壁
着実な前進につながる」。金融審議会 銀行制度等ワーキンググループ(WG)のメンバーを務めた京都大学公共政策大学院教授の岩下直行氏は、こう評価する。WGが打ち出した改正案により銀行グループの業務範囲が拡大し、競争市場への船出が本格的に始まる。
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生保の救世主
周回遅れのDX 協調主義が潮目を変える
米Amazon.comのスマートスピーカー「Amazon Echo」が黄色く点滅している。メッセージが来た合図だ。話しかけると、「SBI生命からお知らせが2件来ています」と伝える。利用者が「アレクサ、SBI生命を開いて」と話すと、「ご契約内容のお知らせは9月18日から順次発送いたします」とメッセー…
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ATMの新天地
「アウトソーシングの提案も受けているが、現時点で選択するつもりはない。新しい施策を打っていきたいからだ」。北國銀行のシステム部上席調査役を務める新谷敦志氏は語る。
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ドコモ口座の傷痕
「3000万円」不正利用で露呈した金融エコシステムの断絶
「金融庁の締め付けが厳しく、対策をしっかりと施すまでは再開させないと言われている」。ある大手決済事業者のセキュリティー担当者は、NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」における不正利用が同時多発的に発生した事件の影響について、こう明かす。ドコモ口座は、同社が展開するスマートフォン決済「d払い」…
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地方銀行 危地での抵抗
地域金融を覆うコロナの影 テジタル活用の決意を問う
新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きつつあるとはいえ、産業界で影響が深刻化するのはむしろこれからだ。感染者数が全国で最も少ない(2020年9月15日時点)岩手県を地盤とする、岩手銀行 システム部長の関村淳哉氏は「地域産業への影響が全国に比べて小さいとはとてもいえない」と危機感を隠さない。「百貨店…
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覚醒する不動産
40兆円市場にデジタル化のうねり 金融越境の火蓋が落ちる
「バブル時代に物件価値を見誤って融資をするなど苦い経験もしてきたが、銀行にとって不動産融資は今もかなりのボリュームを占める」。静岡銀行審査企画グループ長の伊藤秀樹氏は語る。ここ数年、同行が順調に融資残高を積み上げているのが、賃貸不動産投資を手掛ける顧客を対象にした「資産形成ローン」だ。
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量子の鼓動
金融の常識を飲み込むケタ外れの性能
「金融機関が扱う処理の中で、計算に最も時間がかかるのがモンテカルロ法だ。現状では株式市場が閉じてから、処理に10時間程度を費やしている。この複雑な計算をリアルタイムで実行可能にすることを目指す」。こう話すのは、みずほ情報総研サイエンスソリューション部シニアコンサルタントの宇野隼平氏。慶応義塾大学の…
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次代への焦燥
2025年問題を突き崩す スマートフォン証券の模索
「当社グループの顧客は高齢者が多く、20代から40代までのシェアは高くない。10年後には顧客の高齢化が一層顕著になり、50代ですら今より割合が下がる可能性がある。次世代、さらにその次の世代に資産移転が進んだ際に、グループに資産が残らなくなるのではないかと強く懸念している。若年層の資産の受け皿にする…
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中央銀行の葛藤
CBDCの熱狂が問う「デジタル円」の臨界点
デジタル円について具体的な検討を進める――。政府は2020年7月半ばにも取りまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に、こんな内容を盛り込む見通しだ。原案は、自民党金融調査会が同年5月中にまとめる予定の報告書を基にしている。他国から流入するデジタル通貨が、日本の通貨主権や金融政策の自…
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改革続行の覚悟
危機が誘う先送りの罠
「もともとは3月末には落ち着くかと思っていたが、増える一方だ」。日本政策金融公庫(日本公庫)の担当者は、新型コロナウイルス(COVID-19)への対応に追われる現状をこう語る。コロナ禍によって売上減にあえぐ中小企業などに対して特別な融資サービスを提供する同公庫の窓口やコールセンターに問い合わせが殺…
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SBIの新秩序
第4のメガバンクが浮き彫りにする銀行界の足かせ
「従来型の銀行経営で、コア業務を黒字化して持続的に地域社会に貢献するのは厳しいと考えた」。島根銀行東京事務所長の高瀬博隆氏はこう振り返る。同行が資本業務提携に向けたパートナー探しを始めたのは、2019年2月ごろ。2018年度決算の着地が近づき、3期連続でコア業務純益が赤字に陥ることがちらつき始めた…
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規制緩和の目的地
改正資金決済法が刻む銀行の境界
「資金決済法が施行された10年前に、今のスマートフォン全盛の状況は想像できなかった。結果的に同法によって一般消費者向け少額決済などを中心に新たな金融サービスが広がり、大きな効果が得られた。今回の改正法も10年後に振り返ると大きなインパクトを与えている可能性がある」。
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揺らぐ保険の地平
リスクテックが手繰る横並びの終焉
「事業の在り方を本気で見直していかないと、新興のデジタル企業に業界ごとディスラプト(破壊)される」。危機感をあらわにするのは、SOMPOホールディングス グループCEO (最高経営責任者)の桜田謙悟氏だ。
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金融資産 老いとの対峙
ジェロントロジーが215兆円を解き放つ
「預金の解約には応じられない」。千葉県内にある信用金庫。担当者の意外な言葉に、60代の女性Aさんは戸惑いを隠せなかった。Aさんが担当者に依頼したのは、父親名義の定期預金400万円の解約手続きだ。最近、物忘れが目立っていたAさんの父親は「認知症」と診断され、老人ホームに入居することになった。解約した…
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地域通貨の本分
残存率は10% ペイの攻勢に問われる独自性
2016年に開催された伊勢志摩サミットも記憶に新しい、三重県の伊勢志摩地域。2019年11月11日、この地に新たな「通貨」が誕生した。近鉄グループホールディングスが発行する「近鉄しまかぜコイン」だ。
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キャッシュレスの死角
ブーム到来も揺らぐ次の手
この1年で急速に種類が増え、過当競争の様相を呈してきたスマートフォン決済サービス。事業者の鼻息は荒い。背景にあるのは、2019年10月1日に消費増税と同時に始まったキャッシュレス・消費者還元事業だ。「確実に利用者の増加につながっている」と各社は口をそろえる。
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KYCの夜明け
改まる旧習 デジタル金融の扉が開く
「ちょうど良いタイミングだった」。富山県の北陸銀行でデジタル戦略部主任を務める斎藤雄太氏は、同行がスマートフォンアプリ「口座開設&お手続きアプリ」で採用した「eKYC(Know Your Customer)」機能についてこう振り返る。
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Libraからの挑戦
金融当局に迫る仮想通貨との正面対峙
「Libraはパンドラの箱を開けた」。暗号資産(仮想通貨)交換業bitFlyerの創業者で子会社bitFlyerBlockchainの代表取締役を務める加納裕三氏はこう語る。
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FATFの足音
番人が迫るマネロン対策
「必要な確認手続きにご協力をお願いします」。全国銀行協会は2019年6月、一般消費者に向けてこんなテレビCMを打った。マネーロンダリング(マネロン)やテロ資金供与を防ぐため、銀行が預金者の本人確認を強化する取り組みに理解を求める内容だ。
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未完のAI融資
データ自前主義が限界招く
銀行に融資を依頼したものの、数週間たっても返事が来ない。資金を早く調達したいのに、やきもきする日が続く─。中小企業がこんな目に遭わなくて済む日は近いかもしれない。メガバンクや会計ソフトウエアベンダーなどが相次ぎ、人工知能(AI)を活用したオンライン融資サービスを提供し始めたからだ。
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減速する人材求心力
表面化し始めた金融パッシング
「この道幅だと消防車が大きすぎて通れないな」「コンビニがあった方が便利そうだ」─。30人ほどがブロックで組み立てた街の様子を見ながら、真剣な表情で話し合う。三菱UFJ銀行が2019年度に始めた新人行員向け研修の光景だ。
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給与口座の目覚め
240兆円の行方を変えるペイロール
給与は銀行口座に振り込まれるもの─。こうした常識が覆ろうとしている。政府はデジタルマネーによる給与振込の解禁に向けて、本格的な検討に着手した。いわゆるペイロール(資金移動業者のアカウントに対する給与支払い)である。
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スマホ決済の道徳
銀行優位を生み出す「口座連携」のからくり
「銀行の姿勢次第ではビジネスモデルが破綻する。サステナブルな状態ではない」──。
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トークンエコノミーの温度差
不明瞭な“線引き”に戸惑う企業
「LINEが提供するいくつかのサービスは今後、ブロックチェーンを使ったトークンエコノミーに置き換えてもいいと考えている」。LINE Developer Relationsマネージャーの砂金信一郎氏はこう語る。
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意思を持つ通貨
共同体が生み出す「地域経済圏」
「アクアコインでお支払いですね。スマホでレジ上のQRコードを読み取ってください」──。
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LINE新銀行の震度
「GAFA」より先に訪れる“7800万人”の脅威
「米Googleや米Amaon.comが銀行を始めたら太刀打ち出来るのか」──。金融業界で長らく取り沙汰されてきたプラットフォーマー脅威論に対する一つの答えが出る。2018年11月27日、LINEが銀行業への参入を表明した。2018年1月にLINE Financialを設立して以降、怒濤のごとく金…
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情報銀行の乱
プラットフォーマー以上のメリットを出せるか
「定員100人だったところ、約4倍が集まった。企業の期待の大きさを実感している」。日本IT団体連盟情報銀行推進委員会委員長の井上貴雄氏は話す。2018年10月19日、日本IT団体連盟は総務省と共催で、情報銀行の認定に関する説明会を開いた。駆けつけたのは約200社、400人超の企業担当者。官民一体で…
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錆び付いたAPI
電代業が船出、されど進まず
「イノベーションという観点がまったくない」──。
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巡り始めた血流
与信革命が悪しき商慣習を壊す
「3年前は厳しかった。ちょうど元請け業務を始めたころで、大型の工事ほど発注先への支払いが巨額に及ぶ。一方で、顧客からの入金はかなり先。この年の売り上げは倍増したものの、資金繰りではヒヤヒヤしっぱなしだった」─。東北地方に工場を持つ建設会社の社長は過去を振り返る。同社は東日本大震災で被害を受けた影響…
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金融庁の苦悩
岐路に立つ仮想通貨行政
2018年7月、国内の複数の仮想通貨交換業者のもとに金融庁からヒアリングが入った。おびただしい数のチェック項目が並んだ資料を前に、おののく担当者たち。「これに対応するには3人の専任担当者を張り付けても3カ月はかかってしまう──」。
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GMOの野望
悲願の銀行参入、決済の覇者を狙う
「銀行業は、ずっとやりたかった」─。GMOインターネット代表取締役会長兼社長グループ代表の熊谷正寿氏は、感慨深げに語る。2018年7月17日、GMOあおぞらネット銀行が始動した。新しいインターネット専業銀行は、2011年4月に開業した大和ネクスト銀行以来、約7年ぶりだ。
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ブロックチェーンの罪
人材不足が生む負のスパイラル
「ブロックチェーンが改ざんされたわけではなく、取引所の失態。大騒ぎする事件ではない」─。2018年5月末、ライトコインから派生したモナコインのブロックチェーンが改ざんされたという報道を受け、ブロックチェーン関係者は口をそろえて火消しに回った。
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ふぞろいの銀行たち
今、求められる「全銀協ビジョン」
「今年は銀行振込が大きく変わる年になる」。全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)で企画部総務企画グループ長を務める千葉勇一氏は、こう意気込む。
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決済業界リストラの時
「手数料ビジネス」の終えん
東京・渋谷駅から歩いて10分。駅前の喧噪から離れた閑静なエリアに、人気のコーヒースタンドがある。店の名前は「ampere」。独自焙煎の豆を使ったコーヒーと手作りのサンドウィッチが売りだ。
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