取引データを活用する融資サービスであるトランザクションレンディングは、金融機関が満たせなかった資金需要の新たな受け口になり得る。代表格の「Square Capital」が日本で展開するための規制上の課題を検証する。


Square Capital
米Squareが提供するトランザクションレンディングサービス。同社のスマホ決済サービス利用者向けに、取引情報などに基づいた貸付けを実施する。返済期限を設定せず、日々の弁済額が売り上げに応じて変動するのが特長

 海外で人気のFinTech関連サービスを日本に持ち込もうとすると、法規制の壁が立ちふさがる。金融を巡る法規制は世界各国で異なっており、必ずしも海外と同じ手法で事業を展開できるとは限らないからだ。

 本稿では、海外の主なFinTechサービスを例に、もし日本で展開する場合に留意すべき点について解説する。第1回は、トランザクションレンディングの代表格、「Square Capital」だ。

決済情報を融資に応用

 トランザクションレンディングとは、物販販売店やサービス提供事業者に関する取引履歴などのデータを活用し、独自の与信審査、融資を実行する金融サービスのこと。日本でも既に始まっており、決済サービス事業者やEC(電子商取引)モール事業者が参入している。

 トランザクションレンディングには、三つの基本的な特徴がある。一つめが、取引データを活用する点だ。決済サービス事業者などは、日常的に提供する決済サービスを通じてタイムリーかつ直接的に取引データを取得できる。物品やサービスの販売店に資金需要が発生した場合、取引データを基に与信審査ができるわけだ。

 その結果、伝統的な金融機関には対応が難しかった十分な担保・保証を有しない中小・零細事業者に対しても、与信できる可能性がある。日々更新、追加される取引データを逐一把握して融資先の与信状況を追跡することもできるため、与信管理上も優位性を持ち得る。

 二つめの特徴として挙げられるのが、迅速かつ簡易的な与信審査を実現できる点だ。平時から収集・蓄積する取引データを基に与信するため、必ずしも融資先の財務データなどを必要としない。Web画面などを通じて簡易に申込手続きを受け付けられる上、与信材料は既に手元にある。数日以内に与信を実行するビジネスモデルを構築でき、突然の資金需要にも応えられる。

 最後の特徴が、決済と連動した返済システムである。ローン債権の回収を、決済時に融資先事業者が受け取る売掛代金から控除する形で実施するトランザクションレンディングが少なくない。Square Capitalも、その一つだ。融資元である決済サービス事業者などにとっては、貸付債権の保全を図りやすい。一方の融資先事業者はローン返済の原資を外部から調達する必要がなく、売上高に比例した返済が可能になっている。

 伝統的な金融機関では、貸借対照表や損益計算書といった過去のある時点の財務データの提供を受けた上で、与信審査を実施するのが一般的だ。ただし、財務データと実際の与信実行日との間には一定のタイムラグが存在する上、データの精度を確認するための元データを入手するのが困難といった制約が付きまとう。金融機関が融資する上で担保や保証の確保を前提としているのは、やむを得ない面があったと言える。新たに台頭してきたトランザクションレンディングは、こうした課題を克服しようとしている。