優秀な投資家の取引などに従って、自動で取引を実行するコピートレード。日本で事業展開するには、金融商品取引法の規制を受ける。ビジネスモデルに応じて規制対応の負担が変わるため、工夫が必要だ。

森・濱田松本法律事務所 弁護士 矢田 悠、尾登 亮介


eToro

 コピートレードサービスの先駆けとされ、600万人以上のユーザーを抱える。優良なトレーダーの取引をコピーして、為替取引、株取引、商品取引を自動実行できるサービスを展開する。

 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の波は、投資の世界にも押し寄せている。代表格の一つが、2007年に設立されたeToroだ。為替取引、株取引、商品取引のソーシャルトレーディングサービスを提供。180以上の国で600万人以上が利用しているという。

優秀な投資家に従い自動取引

 ソーシャルトレーディングとは、投資家同士が知識や情報、手法を共有できるサービスのこと。主に、「コミュニティ型」と「コピートレード型」に分けられる。

 コミュニティ型は、ソーシャルネットワークを通じた投資関連情報の共有に主眼を置く。投資家は、SNSの情報を使って実際の投資の判断を行う。米国ではSumZero、Estimizeなどがサービス提供している。

 コピートレード型は、自動売買システムを活用し、他の投資家の取引や戦略(ストラテジー)に従って自動で取引を実行する。ユーザー評価によるランキングなどを参考に、コピー対象とする投資家やストラテジーを選択できるサービスが多い。

 多くのサービスでは、コピー対象となる投資家・ストラテジーを複数選び、資金の配分を設定できる。海外での代表的な事業者としては、冒頭のeToroのほか、ギリシアのZuluTradeなどが挙げられる。

 ソーシャルトレーディングは、投資家間の情報格差をソーシャルネットワークによって解消しようとする試みだ。特にコピートレード型の場合、投資経験の浅い投資家が、実績のある投資家と同じ取引ができる点が魅力である。優秀な投資家による情報共有を促すため、一定の報酬制度を組み込んでおり、情報提供者側にもメリットがある。FX(外国為替証拠金取引)を中心に海外で発展してきたサービス形態だが、現在は株式やコモディティの分野にも裾野を広げている。

 ソーシャルトレーディングを日本で提供する際には、法規制との関係で様々な論点が生じる。コミュニティ型で問題となり得る論点の多くは、コピートレード型に包含されるため、本稿では後者を詳しく解説しよう。

コピートレードサービスの仕組みの例
コピートレードサービスの仕組みの例
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