買い物で生じた端数を自動で投資する「おつり投資」で有名な「Acorns」が、成長を続けている。最近は、提携事業者のキャッシュバックを投資に回す新サービスも始めた。日本で展開する際の注意点を読み解く。
森・濱田松本法律事務所 弁護士 峯岸 健太郎/飯島 隆博
物品購入などで生じる端数を、自動で投資口座に移して運用する小口投資サービス。日々の購買に連動させることで、投資への心理的ハードルを下げることをコンセプトにしている。ミレニアル世代を中心に支持を集め、急速に拡大中だ。
「Great oaks from little acorns grow.(大きなオークも小さなどんぐりから育つ」──。
Acornsはこのことわざのとおり、少額のバーチャルな“おつり”を、最初に決めた一定のルールに従って自動的に投資口座に移動させる小口投資サービスだ。
具体的には、物品購入などに際してカード決済で生じる端数を切り上げ、実際の購入代金との差額を投資に回す。例えばクレジットカードで5.75ドルの商品を購入する際に、計算上の口座引落額を6ドルに切り上げる。差額の0.25ドルはデータ上蓄積しておき、一定額に達した時点で投資口座に移すわけだ。
Acornsは、投資に対する心理的ハードルを低くしたことが支持され、2014年8月のリリース以降、急成長を続けている。ミレニアル世代が、Acornsの拡大に寄与していると言われている。
最近では、「Found Money」という新サービスも始めた。これは、提携事業者のEC(電子商取引)サイトでAcornsユーザーが商品を購入した場合、代金の一定額をキャッシュバックするような形で自動的に投資口座にまわすものだ。
今後も発展が期待される「おつり投資」の領域には、日本のスタートアップ企業も参入する動きがある。
そこで本稿では、先行するAcornsを例に、法制度上のポイントを検討する。
Acornsの運営は2社で
Acornsは、ユーザーにいくつかの質問に答えてもらって導出したリスク許容度に沿って、複数のETF(上場投資信託)銘柄で構成したポートフォリオを設定する。その上で、ユーザーによる購入代金の端数額(1ドル未満)を切り上げ、実際の代金との差額を原資として投資を実行している。
実際に投資口座に送金されるタイミングは、おつりの合計額が一定金額を超えた時である。原則は、アプリ上で算定したおつりが計5ドルになると、投資口座に自動送金される。ユーザーは、「毎日1ドルを上限とした積立」や「特定の店での支払いのみを対象とした積立」といった具合に、カスタマイズを施すことも可能である。
Acornsのサービスは、二つの別法人によって実現されている。(1)ユーザーの資金をポートフォリオに沿って運用する(指図を行う)運用業者であるAcorns Advisorsと、(2)ユーザーの資金の預託・ETF投資の口座開設や管理を担うAcorns Securitiesだ。