米国の若年層で急速に広がった個人間送金アプリ「Venmo」。簡単な操作性とソーシャル性が、ヒットの要因だ。日本でも同様のサービスが登場しているが、実現には複数の選択肢が存在する。

Venmo

米国の若年層で普及している個人間送金アプリ。知人との間で送金したり、送金を請求したりできる。本人確認後の送金上限額は、1回当たり2999.99ドル。タイムラインで、友人による金銭やメッセージのやり取りを見ることも可能。

 「Just venmo me!(venmoで払ってね!)」──。米国の若者の間では、“venmo”という言葉が動詞として使われるほど、個人間送金アプリ「Venmo」が普及しているという。Venmoは知人との間で送金したり、送金を請求したりできるサービス。例えば昼食時の割り勘、パーティー代の精算、ルームメイトとの家賃の折半など、利用シーンは多岐にわたる。

ソーシャル性が若年層にヒット

 使い方は簡単だ。アプリ内で、「請求」または「支払い」をタップする。その上で相手を選び、金額とメッセージを付ければ完了する。Venmoが認証したパートナーアプリ(以下、「authorized partner apps」)では、決済手段として利用可能だ。

●Venmoの「authorized partner apps」
●Venmoの「authorized partner apps」
出所:米Venmo
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 Venmoの特徴は、友人による金銭やメッセージのやり取りがタイムラインで流れてくる点だ。金額は隠されるものの、友人がどのようなパーティーに参加したかなどがタイムラインから分かる。こうしたソーシャル性が、若年層で爆発的に普及した一因と言える。

 2012年、米BraintreeがVenmoを買収、翌2013年には米PayPalがBraintreeを買収したことから、現在はPayPalがVenmoを運営している。Web版も提供しているが、本稿ではアプリ版を念頭に置く。

 Venmoを利用するには、米国に居住している18歳以上であることが前提条件となる。その上で、まずは所有する携帯電話番号と連携したアカウントを作成する(Facebookアカウントと連携することで口座を作成することも可能だが、追加情報が必要)。

 利用には、氏名、メールアドレス、携帯電話番号、住所、生年月日、社会保障番号などの個人情報をPayPalに提供しなければならない。

 Venmoのアカウントには、個人用とビジネス用の2種類がある。

 個人用アカウントでは、知人同士の個人間送金のほか、authorized partner appsでの支払いに使える。ただし、それ以外では商業目的による金銭の受け取りが禁止される点に注意が必要だ。個人用アカウントは一つしか所持できない。

 一方のビジネス用アカウントは、一事業ごとに一つ持てる。ただし私的な送金には利用できないとしている。

 友人から受け取ったお金は、「Venmo balance」に貯められる。Venmo内における自身の入出金用口座と捉えると分かりやすい。Venmo balanceの残高は、Venmo 利用者に対する送金に使えるほか、自身の銀行口座に送って出金可能だ。

 Venmoのアカウントを開設する際、Venmoユーザーに対する送金原資を決定する必要がある。これを「Funding sources(以下「原資」という)」と呼ぶ。選択できる原資はVenmo balance、クレジットカード、デビットカード、米国の銀行口座、プリペイドカードである。クレジットカードの場合のみ、手数料が3%かかる。

 送金に際しては、必ずしも事前にVenmo balanceに入金する必要はない。友人からの送金でVenmo balanceの残高が貯まれば、それを原資に送金できる。残高が送金額に満たない場合は、銀行口座やカードといった原資から、資金を供給することになる。

 Venmoと銀行口座を連携させれば、Venmo balanceの残高を自分自身の銀行口座に送金できる(「Bank transfers」)。米国東海岸標準時間の午後7時までであれば、翌営業日には自身の口座に着金する仕組みだ。Bank transfersはVenmoが常にチェックしており、問題があれば、引き出しが遅れたり、ブロックされたりすることもあるという。