
FinTechに関わるテクノロジー動向から社会の課題までを各界の第一人者が解説する。
FinTechに関わるテクノロジー動向から社会の課題までを各界の第一人者が解説する。
「狩猟型」は疲弊を招く コロナ禍はデジタル活用の好機
2007年から「山形地域産学金連携プラットフォーム(YG-Plat)」と呼ぶ取り組みを進めている。山形大学と山形県内に本支店を置く12の地域金融機関が連携して、地域企業の本業を支援する仕組みを指す。
「デジタビリアム」の考えで運用しながら均衡点を見つける
データ活用の重要性がうたわれてから随分時間が経つが、日本の金融分野でもデータ駆動型社会の考え方がようやく浸透してきた。例えば、財務データなどの数字だけでなく、様々な情報から経済のアクティビティー(活動)を捕捉するムードになってきている。この5年間で日本もステージが1つ上がったといえる。
レガシー脱却は目的にあらず ソフト工学の知見を生かせ
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」は、「2025年の崖」というフレーズとともに日本でDX(デジタル変革)への関心が高まる大きなきっかけとなった。私は委員として次のバージョンの作成に関わり、特に「DXをどのように加速していくか」を議論するワーキンググループの座長を務めている。
資金供給だけでは経済成長なし 銀行が果たす価値を定義すべき
市場を作り出せるのはテクノロジーではなく人間。これが私の考えだ。解決したい課題や達成したい目標を定義できていないと、テクノロジーは役に立たない。
スタートアップエコシステムに優劣なし 日本は日本らしい発展を遂げている
2009年にアリババの10周年パーティーに呼ばれたことがある。そこで感じたのは、中国市場に参入するには「too late」だということだった。設立からわずか10年でとんでもないプラットフォームになって社会インフラ化していた。10年前から中国にいれば、プラットフォーム化するような企業と付き合えたかも…
戦略ありきで実態が伴わず 地銀の無為無策は禁物
私は新卒で東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入社し、その後2010年まで、当時世界最大の資産運用会社だった米Barclays Global Investors(BGI、米BlackRockが買収)に所属していた。BGIは当時から、今で言うところのDX(デジタル変革)を担える人材の育成、すなわち「人材の…
金融分野での応用範囲は広い 「ハイブリッド型」が現実解
この1年ほどの間に、量子コンピューターの調査研究を始める金融機関が相次いでいる。英ロイズ銀行は、最適なオプション価格を算出するための偏微分方程式であるブラック-ショールズ方程式を解くために量子コンピューターの利用を試行している。
アドバルーンを上げる時期は終わった 地に足ついた取り組みが焦点に
今回の新型コロナウイルスによって、これまで何となく先送りしてきた変革が加速するとみている。
カルチャーや考え方の変革が急務 他業種にもっと目を向けるべき
地方銀行の担当者に話を聞くと、誰もが「オープンイノベーションをやりたい」と口をそろえる。新事業に取り組まないと立ちゆかなくなる、との危機感を抱いているからだ。住宅ローンの融資額を伸ばしても利ざやは少なく、リスクは高まる一方。地銀同士の営業地域も垣根がなくなり、ネット銀行だけでなく他の地銀とも競合し…
「Libra」のような代替案は歓迎 緊張関係が健全な通貨を生む
中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)は一部の人々が研究していたもので、当面は実現しない未来の話だと思われていた。それがLibraの登場をきっかけに各国が突然本気で考える姿勢を示し始めた。ただし、特に先進国がどこまで真面目にやろうとしているかというと疑問が残る。
あと5年で何をすべきか 「平成の失敗」の追究が必須
私が客員教授を務めているスイスのビジネススクールIMDが毎年発表しているデジタル化の進展に関する国別の調査では、2019年に日本は23位。2018年は22位、2017年は27位だった。デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)に関して、日本企業は世界に比べ非常に遅れているという不都合な…
ブロックチェーン活用の道筋 組織の在り方が問われる
ブロックチェーンを導入したものの期待したほどの効果が得られず、プロジェクトはPoC(概念検証)止まり――。こうした例が後を絶たない。ブロックチェーンに対する企業側の期待の大きさにテクノロジーが追い付いていないというのが理由の一つ。加えて、企業がブロックチェーンの構成要素をフル活用していない点が挙げ…
13週間でノウハウを伝授 FinTechの未来につなげる
FinTechで理想とするエコシステムはどのような姿か。エコシステムとは多くのプレーヤーが関わることを意味する。一人の人間が「これが理想のエコシステムだ」と定義するのは難しい。
日本が目指すは「東洋のスイス」 地銀の再定義が次の社会を引き寄せる
スマートフォンも持たずに着物で歩く会社員、道路を往来するのは車ではなく馬車や人力車――。私が想像する10年後、20年後の最もクールな東京の姿はこれだ。
金融業界に必要なユーザー視点 真のニーズにいかに迫るか
2014年に、調査のためにミャンマーを訪問した。陸路を3時間、水路を2時間行った果てにある村で、どのような資金のニーズがあるか、資金をどう貸しているかなどを現地でヒアリングするデザインリサーチが目的だった。
見えてきたAI活用の将来像「過信」と「不信」をいかに避けるか
「説明可能な人工知能(XAI)」の研究が国内外で活発化しつつある。研究が始まったのは3~4 年前からだ。現在の第3 次AIブームをけん引する深層学習(ディープラーニング)に代表されるニューラルネットワーク技術は、データを学習した結果を人間が見ても理解できないことが最大の問題点だ。これが数々の問題を…
一体化する現実世界とデジタル新たな信用情報が社会を変える
IoT(インターネット・オブ・シングズ)やモバイルが当たり前になると、現実の世界でもオフラインの状態がなくなる。我々は、こうした現象を「アフターデジタル」と呼んでいる。アフターデジタルの時代に重要なのは、OMO( Online Merges Offline)という考え方。現実世界とデジタルを分ける…
行動変容を促すきっかけ作りがテクノロジーの限界を克服する
バスケットボールのゴールを付けたごみ箱と普通のごみ箱を並べて、どれだけ使われるかを実験したことがある。5週間にわたり利用者の人数をカウントしたところ、前者が1.6倍という結果だった。バスケのゴールという「仕掛け」を施すだけで、これだけの効果が得られる。
アルゴリズムが生み出す ブラックボックスの放置は禁物
憲法はプライバシーの権利を保障している。一方、AI(人工知能)やビッグデータの世界では情報を集めることが重要になる。プライバシーの考え方とデータがけん引する社会の間には、そもそも一定の矛盾が存在している。大学院の修士課程で研究していた「遺伝情報の保護」を例に取ろう。