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 問題点は(3)の文章「ダウンロードしたデータからエラーを取り出し保存する」にあります。

 この文章は複数の意味に解釈できる「多義文」になっています。1つの意味は、「データからエラーを抜き出して、そのエラーデータを保存する」こと。もう1つの意味は、「データからエラーを排除して、正しいデータだけを保存する」ことです。

 手順書を書いた人と作業をする人で文章の理解が異なると、トラブルが発生します。例えば、手順書を書いた人の意図は「正しいデータだけを保存する」だったのに、作業する人が「エラーデータだけを保存する」と理解した場合。保存されているデータが「正しい」ことを前提に別の作業に使われたとしたら、様々な問題が発生するでしょう。

 この手順書の問題を解決するには、「データを取り出し保存する」という部分をより詳しい作業内容に書き替える必要があります。保存するのが正しいデータなのかエラーデータなのかを明記しましょう。

 仕事の現場には、このような多義文があふれています。自分が書いた文章は、誰がいつ読むか分かりません。今の業務に詳しくない人が読む可能性も考え、誰が読んでも同じ解釈になる文章を書くよう心がけましょう。

豊田 倫子
コンピュータハウス ザ・ミクロ東京
豊田 倫子 ヘルプデスクや検証技術者などを経て、約20年前から教育サービスに携わる。新入社員研修やリーダー研修、マネジャー研修などの企画コンサルティングや教材開発、研修講師、研修運営などを担当する。人材育成研修の受講生は延べ7万人。特に人気の研修が、本セミナーのベースとなっている文章力研修で、これまでに約5000人の文章を指導してきた。日経 xTECH ラーニングの人気セミナー「伝わる文章の査読・指導スキル養成講座」の講師を務める。