全1444文字

 伝達ミスを招く文章の典型的なパターンは、さまざまな解釈ができるものです。これを「多義文」といいます。今回の質問の場合、「システムAでエラーX、システムBでエラーYが表示されたときは」の部分が問題になりました。「、」(読点)の部分を書き手は「AND」、読み手は「OR」と解釈してしまったのでしょう。

 今回は問題になっていませんが、「担当者Zに迅速に連絡してシステムを再起動する」の部分も、読み手によっては複数の解釈ができてしまいます。1つは「迅速に」の部分。これは「1秒でも早く」なのか「5分以内に」なのか、それとも「10分後」でもいいのか、はっきりしません。また、「担当者Zに連絡した後にシステムを停止するのかどうか」「担当者Z本人が停止するのかどうか」も明確には記されていません。ここにもトラブルを生む要素が潜んでいます。

 こうした伝達ミスの問題を防ぐ指導法はいくつかあります。最大のポイントは「一文一意」を意識させることです。特に1つの文が長いときは多義文になりがちですので、数行にわたって1つの文が続いているとしたら注意が必要です。

 具体的には、次の点に気をつけるよう指導しましょう。まず「1つの文を短くする」です。複数の文に分割できるものは、できるだけ分割しましょう。そして、文と文の関係が分かるように補足しましょう。その際、「AND」や「OR」についても明確にします。文の順番を入れ替えることで、伝わりやすくなることもあります。

 これらを考慮して質問にあった作業指示を書き換えると、次のようになります。「システムAでエラーXが表示されつつ、同時にシステムBでエラーYが表示されたときは、次の作業を行う。まず、担当者Zに5分以内に連絡する。その後、担当者Zの指示に従ってシステムAとシステムBの両方を再起動する」です。

 これは一例であり、ほかにも誤解を招かないように書き換えることができます。ご自身で考えてみてください。条件が複数になるときは、箇条書きにする手もあります。図やフローチャートを使う手もあります。

 できれば、第三者によるレビュー(査読)を行うこともお勧めします。レビューよりも作業を優先したくなる人は多いでしょう。しかし、早い段階で伝達ミスの可能性をつぶしておけば、後工程での手戻りやトラブルを未然に防げます。特にシステム開発の仕様書やシステム運用の作業指示書などは、第三者によるレビューを実施するとよいでしょう。

豊田 倫子
コンピュータハウス ザ・ミクロ東京
豊田 倫子 ヘルプデスクや検証技術者などを経て、約20年前から教育サービスに携わる。新入社員研修やリーダー研修、マネジャー研修などの企画コンサルティングや教材開発、研修講師、研修運営などを担当する。人材育成研修の受講生は延べ7万人。特に人気の研修が、本セミナーのベースとなっている文章力研修で、これまでに約5000人の文章を指導してきた。日経 xTECH ラーニングの人気セミナー「伝わる文章の査読・指導スキル養成講座」の講師を務める。