独立系SI企業に勤務する檜山大樹が、一人前のプロジェクトマネジャーになるまでの成長を描いた連続小説です。上司や顧客などさまざまな立場の人物が登場。それぞれの思惑が絡む現場をリアルに描写します。自身の経験や考えを重ねながら読み進めてください。
主な登場人物




<挿絵:大久保 友博>
ストーリーで学ぶプロマネの心得
独立系SI企業に勤務する檜山大樹が、一人前のプロジェクトマネジャーになるまでの成長を描いた連続小説です。上司や顧客などさまざまな立場の人物が登場。それぞれの思惑が絡む現場をリアルに描写します。自身の経験や考えを重ねながら読み進めてください。
<挿絵:大久保 友博>
エピソード1 できもしないこと(前編)
「悪いけど、自分でパンを焼いて食べてくれない?私、ちょっと…」妻の亜佐美の言葉を聞いた瞬間、檜山の口が勝手に動いた。
エピソード1 できもしないこと(後編)
仁科次長のせいでペースが乱れてしまった。檜山は結局、客先で資料をチェックすることにした。課題への対策。チェックシートを作り直して品質を担保。時間外勤務と休日出勤で順次テスト仕様書を仕上げ、五月雨式に検証を進める。
エピソード2 帰ってこいよ(前編)
「すみません、今日明日はどうしても時間が取れないので。いや『時間は作るもんだ』とおっしゃるのも分かりますが、本当に手が回らなくて…改めて電話しますので」
エピソード2 帰ってこいよ(後編)
ノートPCを抱え、浮かぬ顔で307会議室に入った檜山を待っていたのは、岡崎担当部長によるヒアリング攻勢だった。檜山の挨拶も愚痴も聞く気はないらしく、座ったか座らないかのうちに『女史』はさっそく切り出した。
エピソード3 なければ作れ!(前編)
「ひえーっ」PLの吉山ゆかりは目を丸くしてプロジェクトルームの中を見回した。20人分の机、無線LAN、コピー機にプリンター、ドキュメント用のキャビネット。必要なものはすべてそろっている。
エピソード3 なければ作れ!(後編)
顔を合わせた途端、仁科次長は言った。「メシだ。メシを食いに行こう。檜山、最近また元気がないそうじゃないか。いかんぞ、それは」「いやあの、ちょっと今日は、ご相談がありまして…」
エピソード4 ちゃぶ台返し(前編)
今度ばかりは、檜山は上司に対して怒りを覚えた。仁科次長の胸倉をつかんで締め上げてやれたら、どんなにすっきりするだろう。今回檜山が担当しているプロジェクトは、ニッケイ物流の新しい社内融資システムで、パッケージを使って構築する。
エピソード4 ちゃぶ台返し(後編)
プロジェクトマネジメント部(PMO)の岡崎担当部長の前で、檜山は、話を締めくくった。日ごろ、変更管理について口を酸っぱくして指導している岡崎『女史』なら、分かってくれるだろうと思ったのだ。
エピソード5 裏切りの代償(前編)
檜山は上司の仁科次長と顔を突き合わせていた。ここは顧客であるハクキン食品の会議室。檜山がPMを任されたのは、同社の管理会計再構築プロジェクトだ。
エピソード5 裏切りの代償(後編)
仁科次長に呼び出されたPTアーキテクト社の営業担当、友澤の顔は、心なしか青ざめていた。何の用件なのか、薄々感付いているのだろう。
エピソード6 身内は難しい(前編)
通称「雛段」と呼ばれる壁際の席から手招きした仁科次長の声が、いつになく重たかったので、檜山は一瞬ぎくりとした。先月まで担当していたハクキン食品の新管理会計システムに、何か不具合でも出たのかと思ったのだ。
エピソード6 身内は難しい(後編)
檜山は、プロジェクト計画書をにらみ、頭を抱えていた。懇親会から1カ月が過ぎていたが、社内プロジェクトは、うまく進んでいない。
エピソード7 身体は一つ(前編)
1塁側の内野席からグラウンドを見下ろし、檜山は考え込んでいた。テレビで観戦するのと違い、カクテル照明に浮かび上がる人工芝のフィールドは、ずいぶん広く見える。
エピソード7 身体は一つ(後編)
事前のデータ収集が重要だということは分かる。あらゆるプロジェクトは「計画八割」と言われる。つまり、どれだけ先を読み、リスクを計算して計画を立てられるかがすべてで、キックオフしたときには、既に勝負がついているのだ。
エピソード8 グローバルギャップ(前編)
キッチンで朝食の用意をしていた亜佐美が、檜山に声をかけた。
エピソード8 グローバルギャップ(後編)
それから一週間後…
エピソード9 品質本位(前編)
檜山の手のひらは、緊張で汗ばんでいた。少し髪の長すぎる『萱森次長』の顔が、かすんで見える。萱森次長は、この品質評価会議の対象となっているプロジェクトの顧客側の責任者だ。
エピソード9 品質本位(後編)
吉山ゆかりはずいぶんと嫌がっていた。檜山は頭を振った。たぶん、これまで定量的品質管理をやったことがないからだろう。だが、これまで通りのやり方を続けていても進歩はない。最近では顧客から品質管理の手法を問われるケースも増えている。
エピソード10 プロジェクトアンドプログラムマネジメント(前編)
「どういうことですか!河内は、来月からうちの管理会計プロジェクトに配属されるはずだったじゃないですか。予定通りにアサインしてください」自分の担当するプロジェクトが軽んじられているような気がして、檜山は頭に血が上った。
エピソード10 プロジェクトアンドプログラムマネジメント(後編)
朝一番に、休暇明けの仁科次長に呼びつけられた檜山は、先週とは打って変わって明るい表情になっていた。仁科次長に聞かれる前に、檜山から話を切り出す。「河内君の件でしたら、アサイン遅れが1カ月を超えても大丈夫ですよ、次長」