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「友澤さん。もう長いお付き合いじゃありませんか。ここは本音でいきましょうよ。御社にも事情がおありなんでしょう? 当社の購買も、かなり厳しいことを申し上げているようですし、ご苦労があるのもわかっております。私どもにも一緒に解決策を考えさせていただけませんか。ご支援できるところだってあるかもしれません。そうでしょう?」

「あ」

 友澤は、不意を突かれたように、口を開けて目を白黒させた。

 それから、恥じ入ったように頭を下げた。

「分かりました。そこまで仰るのなら、お言葉に甘えて、ご相談させていただきます。実は…」


 前とは打って変わって、溌剌とした様子で顧客と話す遠山を横目で見ながら、吉山ゆかりは檜山にささやいた。

「よかった、遠山さんが外れなくて。檜山さん、裏切りだとか責任問題だとか言うから、もう駄目かと思った。あたしじゃとても無理だし」

 檜山は頭をかいた。

「最初は外すつもりだったんだ。すっかり頭に血が上ってしまって。でも仁科さんに諭された。感情的にならずに、プロジェクト全体にとって何が最適かを考えろって。ステークホルダーには、それぞれの事情や思惑がある。ウイン・ウインの関係を作らないと、長続きしないぞって」

「だから、うちから支援要員を出したのね」

 遠山の傍らには、吉山ゆかりの後輩である福田SEが座って、ヒアリングの記録を取っている。記録や課題整理の役割から外れた遠山は、もともとの強みであるコンサルティングの能力をフルに発揮して、要件定義の推進役に専念している。

「支援費用はいただくけどね。仁科さんが別の商談で、PTアーキテクト社に声をかけたから、友澤さんの顔も立ったみたいだよ」

 檜山は吉山ゆかりに向かって軽く頭を下げた。

「助かったよ。遠山さんの状況やハクキン食品さんの反応を教えてもらえたから、交渉できたんだ。メンバーの本音を探れる飲み会も大事だな」

 吉山ゆかりは、ニッと笑った。

「よかった。で、早速なんですけど、また面白いお店を見つけたんですよ。どうですか、来週の金曜…」

 檜山は首を振った。どうやら今回は宴会クイーンをすっかり図に乗らせてしまったらしいぞ。やれやれ、どうなることやら…。

パートナー企業の裏切りに遭ったときの3つの心得

吉山 檜山さん、なんか最近怒りっぽいんじゃない?

檜山 そ、そうかな。

吉山 そうだって。毎日遅くまで根を詰めていると、ゴムが弾けるみたいに切れちゃいますよ。ね、来週の金曜、新しいお店に行きましょ。遠山さんたちも誘って。

檜山 うん、それもいいけど。その前に、仁科さんも入れて、要点をまとめておかないと。吉山さんも後で呼ぶから手伝ってね。

吉山 はあい、了解っす。