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それから一週間後…。
「檜山さん、大変です」
喜多邦夫が、プリントアウトした紙を持って、慌てた様子でやってきた。喜多は会計に詳しいSEで、プロジェクトリーダーとして社内管理会計システム再構築プロジェクトを支えてくれている。
「どうした?」
社外プロジェクトの課題について考え込んでいた檜山は、PCのディスプレーから顔を上げた。
「オフショア先が…協力できないと言っています」
「協力できない?」
どうやら喜多がオフショア先に出したメールが発端となったようだ。檜山は、喜多から手渡された紙の一番後ろから目を通した。そこには、喜多がオフショア先とやり取りしたメールの履歴が印刷してある。
喜多がオフショア先に送信したメールの文面には、特に変わったところはない。1週間前に変更依頼した10本ほどのプログラム仕様書について、納期を確認する内容だ。
それに対して、現地法人の程さんというリーダーから返事があった。
「そのままの納期ですか?テストなくて納品しますか?」
喜多の回答はこうあった。
「品質確保の観点から、単体テストは実施後に納品いただきたいです。変更はご連絡済みだと存じます。作業が窮迫しており、納期が遅れると結合テストに影響することから、ご協力よろしくお願いいたします」
問題は、その次の、程さんからのメールだった。