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 朝一番に、休暇明けの仁科次長に呼びつけられた檜山は、先週とは打って変わって明るい表情になっていた。

 仁科次長に聞かれる前に、檜山から話を切り出す。

「河内君の件でしたら、アサイン遅れが1カ月を超えても大丈夫ですよ、次長」

 仁科次長は、にやにやと笑いを浮かべた。

「おやおや、先週は凄い剣幕で怒っていたのに、どういう心境の変化だ?」

「体制を見直したんです」

 檜山は修正したプロジェクト計画書を差し出した。

「ワークフロー設計のリーダーには、当面、吉山を兼務で充てます」

 仁科次長が、檜山を見返した。

「彼女で大丈夫なのか? ワークフロー設計は河内じゃないと無理だと言っていたと思うが」

 檜山は顔を赤らめた。

「もちろん、河内がベストです。でも、開発第五グループの川村がフォローについてくれるなら、吉山でも何とかなります。実は、既に関谷グループ長から内諾をもらっているんです。吉山と川村は同期だし、お互いにコミュニケーションも取りやすいでしょう」

「そうか」

「それに…」

 檜山は先週金曜日に気付いたばかりのポイントについて説明した。

「製品バージョンアッププロジェクトで追加されるモジュールは、うちのプロジェクトでも使えることが分かったんです。だから、河内君には最後まで製品バージョンアッププロジェクトをフォローしてもらって、予定通りにリリースしてもらったほうが、うちとしても開発範囲を抑えられてお得なんです」

「そうかそうか」

 仁科次長はうなずくと、回転椅子の背もたれに寄りかかった。

「ピーピーエム(PPM)って言葉を聞いたことあるか、檜山?」

 檜山は、目をぱちくりさせた。