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 自分の選択が賭け事の対象になっているとも知らない檜山は、カウンターに腰を落ち着けると、さっそく運ばれてきたビールを、当川のグラスに注いだ。

「本当に、長いことお世話になりました」

「いやいや」

 当川は素早くビール瓶を取り上げると、檜山のグラスに注ぎ返した。

「こちらこそ、お世話になりました」

 宴会クイーンの異名を取る吉山は、もう1本の小瓶から、既に手酌で自分のグラスを満たしている。

「それじゃあ、当川さんの前途を祝しまして、カンパーイ」

 グラスが触れ合い、それぞれがビールを口にする。3人のグラスがカウンターに戻ると、吉山は、見事なタイミングで宣言した。

「これにて挨拶は終わり。後は無礼講よ。ねえねえ、当川さん。どうでしたか、うちの檜山の仕事振りは?」

 檜山が、当惑したような声を出す。

「おいおい、いきなり仕事振りなんて言っても、答えにくいだろう」

 吉山は、グループ長に何を言われても動じない。

「いいのいいの。今日が最後なんだから、聞くこと聞いておかなくちゃ。ね、当川さん、どうでした?」