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「次長、すみません。折り入ってお願いがあります」
あらたまった檜山の口調に、仁科次長は目を剥いた。
「檜山か。何だ急に。びっくりするじゃないか」
檜山は、深々と頭を下げた。
「本日のデータセンター見学ですが、よんどころのない用事が入りまして、キャンセルさせてください」
「えっ? キャンセル?」
仁科次長は、目をさらに見開く。
「よんどころのない用事って何だ? 障害か何かか?」
檜山は、首を横に振った。
「じゃあ、別のお客様から呼び出しでもあったか?」
檜山は、また首を振る。下手にごまかさず、正直にいこうと、もう決めていた。