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 グループ長になると、面倒くさいことが多いけれど仕事の幅が広がる。檜山もようやく、そのことに気づいてきた。

 例えば、今日のような場合だ。

 檜山は、協力会社Ptソフト開発の営業担当、村内に笑いかけた。

「村内さん、またお世話になりますよ。前回の白金出版の時にはご苦労をおかけしました」

「いや本当に」

 村内は、大げさに渋面を作ってみせた。

「正直、採算割れで、私も社内でさんざんどやされましたよ」

「そうでしたか。村内さんには、本当にお世話になりました」

 白金出版の人材管理システム再構築は、苦しいプロジェクトだった。人事部門と組合の交渉がこじれて、要件定義工程が2カ月近く遅延した。PM(プロジェクトマネジャー)を務めていた檜山は、やむなく見切り発車で基本設計工程を並走させることにしたのだが、これが裏目に出て追加変更が続出。分割稼働で何とか納期はしのいだものの、追加予算折衝が不調に終わって、大きなコスト超過を招いてしまった。情報系を一括外注したPtソフト開発にも影響が及んで、かなりの迷惑をかけたのだ。

 Ptソフト開発側に変更管理の問題があり、開発費用の持ち出しで対応してもらった。ある意味、村内は檜山の会社での苦境を知っていて、「泣いて」くれたとも言える。その実態は檜山にもよくわかっていて、心苦しく思っていた。