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 搭乗時刻まではまだ時間があった。空港はシーズンオフのためなのか、思ったほど混雑していない。セキュリティーチェックも驚くほどすんなりと通れたし、ゲートの周りは人もまばらだ。

 ゲートから少し離れて、人のいない場所を選んで座った。

「我が社の次の柱となる新規事業を考えてくれ」

 専務に言われたことを思い出していた。言われたのは先週のことだ。新規事業なんて言われても、どこから手をつければいいのかまったく分からない。

 その日の帰り道、これまで自分が担当してきた仕事について考えてみたが、自分がなぜ新規事業を担当するのか不思議で仕方なかった。

 会社に入って10年以上、自治体向けにトンネルやバイパス道路を作る国内の現場を担当してきた。最初は北陸を担当し、その後東北に配属された。営業の担当が取ってきた仕事を、仕様書通りに納期までに完成させる。そのことだけを考えて働いてきた。会社という機械の部品の1つと言われても仕方ないとは思うが、道路を建設することで、社会の役に立ってきたという自負はある。

 ただ、新規事業を考えるとなると、そんな経験は役に立ちそうに思えない。どこから手をつければいいか見当もつかなかった。新規事業開発に向けた業務の第一歩になる今回の海外出張も、上司に言われてきただけで、何をすればいいのかよく分かっていない。

 空港の搭乗ゲートは大きなガラスで囲まれている。その向こうに広がる空は、どんよりとしていた。出張の先行きを暗示しているようだ。

 建設会社が新規に事業を始めて、成功するのだろうか。言い方は乱暴だが、建設会社は、国や自治体から降ってくる仕事をこなしてここまできた。仕様を決めるのは、国や自治体だ。建設会社は決められた仕様の橋や道路を、スケジュール通りに作ればいい。箱もの行政に批判が集まり、公共投資が抑制されても、その体質は変わっていない。