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「もう1つ、天才に頼らない方法があるよ」

「えっ」と顔を上げた。

「ホンダには、本田宗一郎という天才がいた。普通の人には天才のまねはできない。そこで普通の人でも何人か集まれば、天才に頼らずにイノベーションや革新的なことができるようにと、ホンダではいろいろな手法を編み出した。代表例がワイガヤだ。ワイガヤという言葉から、なんとなく人が集まって、わいわい意見を交わせばいいように思われるが、本当はそうではない。三日三晩泊まり込みでトコトン議論することで本質をつかむ方法だ。三日三晩、議論し続けようと思ったら上辺だけでは続かない。議論は本質論になる」

 客にとっての価値がどこにあるのか、三日三晩トコトン議論したら見つかるということか。しかし、トコトン議論するのに付き合ってくれる人がうちの社内にいるだろうか。そうした問題意識を持っている人。そのとき、岸谷専務の顔が浮かんだ。いや。三日三晩、専務と2人は絶対に避けたい。頭を振って岸谷専務の顔をかき消した。

 森田さんが私の悩んでいる姿を見て助言してくれた。

「最近は、自治体にも問題意識の高いのがいる。そういうとがった人とトコトン議論してみたらどうだ。そうしたら、本質が見えてくるのではないか。そういう人たちと知り合って、普段から情報を共有できるコネクションを作っておくことだよ」

 外部に議論する相手を探すのも手か。

 そうであればなおさら建設会社は、顧客や社会のニーズを先取りする感覚を磨く必要があるのではないか。そうしなければ、そのとがった人も相手にしてくれないだろう。自治体の先にいる市民のニーズも捉えておく必要がある。他から来た新興企業にすべてを持っていかれてしまわないように。

顧客第一主義
顧客の気づいていない価値を創造する
現場に足を運ぶ
トコトン議論する

 頭の中を整理しながら、もう1つチョコを口に入れた。


日経BP総研 クリーンテック研究所
日経BP総研は、日経BPが持つ総合研究所。クリーンテック研究所は、その一部門。環境・エネルギー、交通、IoT(Internet of Things)、スマートシティなどを含め、広範囲に及ぶ社会的課題解決をテーマとする。企業・産業の意思決定や国の政策決定への貢献を目指す。2010年設立。

ドリームインキュベータ
戦略コンサルティングを通じて、日本企業とともに社会のあり方を変えるビジネスプロデュースを実践。戦略コンサルティングスキルという、ビジネスにおける最も普遍的で有益な根源的スキルをベースとして、そのスキルを顧客企業へのサービスだけでなく、自社の投資・インキュベーション・事業経営にまで展開することで社会のあり方を変え、日本経済を元気にするビジネスプロデュースに取り組む。