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 前を見ると、見学ツアーの先頭は検査工程のエリアまで進んでいた。我々も後に続いて部屋に入ると、森田さんが私と伊塚さんの間に立って、再び解説をしてくれた。

「生産工程も大きく変わろうとしているが、それ以上に自動車の価値を大きく変えることが起こりつつある。それは自動車を運転する環境だ。これからは大きく変わるぞ。既にコネクテッドカーでは、ネットに常時接続して最新情報を入手し、渋滞情報、天気、駐車場の空き情報などの現状と予測の情報を分析するようになった。

 今後は、さらにレストランやテーマパーク、競技場、観光地、他の車の位置情報などとも連動して、目的に対応した最も快適な移動方法を提供するようになる。車の機能強化だって、通信でソフトウエアを更新すれば済むようになっていく。乗車できるスマホのようなものだ」

 森田さんは、私と伊塚さんの顔を見比べて、にやりと笑った。

「そして、自動運転の世界はすぐそこまできている。自動運転が実現すれば、運転しなくていい自由な時間が増えることになる。電車やバスのような公共の場でもないので、プライベートな場所で好きなことができる。最適なルートで人を運ぶ道具というだけでなく、移動している時間を使って人を楽しませる空間になる。映画の上演はもちろん、仮想空間(VR)で南の島への旅行も疑似体験できるし、ディズニーランドのスターツアーズのように座席を動かして、あたかも宇宙旅行をしているように見せることも可能だ」

 自動運転の話はよくテレビなどでも取り上げられているが、ただ運転しなくてよくなるだけかと簡単に考えていた。確かにその移動時間に何をするか、何ができるかは、乗車する人にとって重要だ。

 森田さんは話を続けた。