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 医薬品や化粧品事業の説明を見ると、リーマン・ショックより前、2006年に機能性化粧品やサプリメントを発表して事業を本格的にスタートしたとある。2008年は、富山化学工業を買収し、2011年には米国メルクよりバイオ医薬品製造会社を買収、2014年には京都大学iPS細胞研究所と認知症治療薬の共同研究を始めた。そして、2016年には武田薬品の子会社である和光純薬工業という試薬大手の買収を発表している。矢継ぎ早に買収を行い、事業を拡大してきているのが分かる。

 医薬品と化粧品はヘルスケア部門に含まれている。医薬品と化粧品だけを取り出して貢献度を測ることはできないが、とりあえずヘルスケア部門の成長を見てみよう。機能性化粧品とサプリメントの発表を始めた2006年にヘルスケア部門の前身の医療画像分野の比率が8%。それから9年たった2015年度のヘルスケア部門の売り上げは、全体の17%にまで上がっている。9ポイントアップだ。ヘルスケア部門が一つの柱になったと言っていいだろう。

 とはいえ簡単に新しい事業を立ち上げられるものではない。そこへ至るまでの道のりはとても険しかったはずだ。そして今でも血のにじむような努力をしているだろう。写真フィルムに代わる事業を、富士フイルムはどうやって見つけ出したのか。化粧品や再生医療にどうして目を付けたのだろう。どこかにヒントがないかと、スマホのメモを開いてみた。

経営者が危機感を持たなければいけない
まったく関係ない業種が新規参入してきて事業を奪われる可能性がある
ほらを吹いて仲間を増やす
顧客のことは聞かずに顧客に新しい価値を生み出す
「やれそう、やるべき、やりたい」
虎の子の技術

 これまで教わったことを見返しながら、富士フイルムが新事業をどうやって見つけたのか、うちの会社はどうすれば見つけられるのか、考えてみるものの、答えが浮かばない。セミナーが終わったら森田さんを探そうと考えた。富士フイルムの新規事業の探索方法が気になって、IoTのセミナーの内容はまったく頭に入らなかった。

 セミナーが終わり、森田さんを探しに行こうと立ち上がった。すると一番前の席に黒光りした禿げ頭が揺れているのが目に入った。森田さんだ。遠くから見ても、あれほど分かりやすい風貌の人はいない。