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 逆T字の話を聞いた後に森田さんとは別れて、権田さんと伊塚さんと3人でお昼ごはんを食べにホテル近くのステーキハウスに入った。ランチメニューを注文すると、まずはどのメニューにもついてくる大盛りのサラダとスープが配られた。一人ひとりの前に、山盛りの野菜が入った大きなボウル皿が置かれた。

 権田さんは、サラダとスープの写真をスマホで撮っている。SNSにでも上げるのだろうか。

 サラダを食べながら、工場で伊塚さんと一緒に聞いた虎の子の技術の話を権田さんにしてみた。権田さんは興味を持ったようで、少し考えてから昔を振り返って話し始めた。

「確かにテレビを売っていればいい時代は、1社ですべて完結していたから、どこが強みなのか漠然としていたかもしれない。ブランドなのか、デザインなのか、画質なのか、操作性なのか。どれか一つでも負けたら終わりという気持ちだったからな。でも最近はいろんなものがつながって、一つのサービスになっていることが多いから、自社の持っている技術のどこを強みにするかを見定めて、そのシステムを構成するメンバーに加わることを考えないといけないということか」

 伊塚さんがそこに話を付け加えた。

「1社ですべてやっていたときには、なんでもやらないといけなかったけど、逆にこれからは強みとなる虎の子の技術を持っていれば、うまくパートナーを集めて、後はパートナーに任せてもいいと森田さんは言ってました」

 権田さんは伊塚さんの意見にうなずいた。

「パートナーとうまく連携すればいいのか。そのとき中心的な役割を担うという手もあるし、メンバーの一員として、与えられたポジションに徹して利益を稼ぐという方法もあると。コンデンサーでシェアの高い村田製作所や自転車のブレーキで世界トップのシマノも完成品を作っているわけではないが、存在感は圧倒的だ」

 そこで自動車の価値がどう変わるのか森田さんに聞いたことを権田さんに説明した。