全4182文字

「なんか、面白そうな話をしているな」

「森田さんもこの店に来てたんですか」私が聞くと、

「今、来たとこだよ」

 森田さんが指さす方向にテーブルに着こうとしているアメリカ人らしき男女4人組がいた。

 伊塚さんがウイーンのサッカー場の仕組みを森田さんに説明した。

「なるほど。確かにその仕組みを構成するメンバーに入っていなければ、勝ち組には残れない。ならば、メンバーに入るために最初に考えなければいけないことは何だと思う?」

 3人とも突然の質問に答えられなかった。

「それなら質問を変えよう。そのメンバーとはどういうメンバーだと思う?」

「どういうメンバーって、スポーツ観戦のあとの混雑を緩和したい企業や団体じゃないですか」伊塚さんが答えた。

「そうだ。だからメンバーに入るためには、混雑を緩和したいという共通の課題を持っていることが大事なんだ。さらにその中でリーダーになりたければ、その課題を解決しようと最初にメンバーに働き掛ける必要がある。誰かがやってしまう前に」

「声が掛かるのを待つのではなく、自分から仕掛けるべきだと言うことですか」伊塚さんが興奮気味に言った。

 森田さんは説明を続けた。

「社会の課題を見つけて、それを解決するための仕組みを考える。その仕組みを実現するために、自社以外にどんな企業や団体が必要なのかを考えて、その企業や団体に働き掛けてチームを組めばいいんだ」

「メンバー選びは社会的課題を一緒に解決してくれる企業になる。それなら、その社会的課題が決まらないことには始まらないということか」権田さんが思案顔で答えた。

「だから、最初に考えなければいけないことは、社会の課題がどこにあるか」森田さんは最初の質問の答えを明かしてくれた。

「そうか。解決すべき社会的課題が決まらないと、どのチームに加わればいいかも分かりませんものね」伊塚さんがうれしそうだ。

「社会的課題を決めれば、それを解決することが新しい価値となる。その解決の手段の一つがIoTということだよ。だから企業はIoTを前提にした商品を開発する必要があるんだ。あくまでも先に来るのは課題だよ。それから手段としてのIoTとなる」

 ここで森田さんは、エレベーターを例にとって話し始めた。