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 森田さんと入れ替わりにウエイターが特大のステーキを持ってきた。その横にあるマッシュポテトだけで十分にお腹がいっぱいになりそうな量だった。見ているだけでお腹が膨れてくるようだ。

 権田さんが森田さんの言っていたことの意味を伊塚さんに聞いている。

「エレベーターに何が求められるのかを見つけることが重要だってことは、これまでとはエレベーターに求められることが変わってくるということかな」

 伊塚さんは少し考えてから、「多分ですけど」と話し始めた。「新しい価値を実現するためにエレベーターに求められる機能が何かを見定める必要があるということじゃないでしょうか。結局、課題の解決に役に立たなかったら意味がないので、求められることも変わってくる。そのエレベーターに求められることを知るためにも、よいパートナーを選ぶ必要があるってことかと」

 権田さんが「なるほど」とうなずいた。

 ここで伊塚さんがひらめいたように「そうか、森田さんの言っていたのは、このことか」と言った。「その時にすべてさらしてしまうとノウハウを奪われるから、オープンにする技術とクローズにする技術の切り分けが必要になると。自動車の価値が変わることを教えてくれたときに、森田さんがそんなことを話していました」

 権田さんと伊塚さんの会話を聞いていて少し分かってきた。

「ここでオープン&クローズ戦略が重要になってくるということですね」

 森田さんに聞いたオープン&クローズ戦略について権田さんに話した。

 権田さんは、実感として持っていたようだ。

「パソコン事業では、いくら売っても、インテルとマイクロソフトを儲けさせるために仕事をしているみたいで、なんともつらかった。パソコン本体は価格競争で薄利多売に追い込まれて、誰のためにビジネスしているのか分からなかったよ」

「森田さんもパソコンの例は挙げられていました」

 昨日、森田さんからインテルとマイクロソフトのオープン&クローズ戦略の話は聞いたが、周りの企業は競争が厳しかったようだ。