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「IoTではデータを測定して収集するところに目が行きますが、ただビッグデータを集めても、どうしていいかわからないのが現状ではないかな。やはり、そのデータを分析するソフトウエアの勝負になるような気がします」

 データを持ったもの、データを収集するすべを持ったもの、あるいはそのデータを解析できるところが勝つのだろうか。

 そこは、権田さんは別の意見のようだ。

「IoTの時代には、日本企業は、IoTのTに当たる〝モノ〞の作り手が多くいることが強みになると思うんだよ。

 インターネットでは、いわばTがパソコンとスマホの二つだった。この両方ともアメリカ企業にやられてしまった。でもIoTの時代になれば、Tはそれこそあらゆるものになる。日本企業は、多くのTを作っている。自動車、工作機械、建機、空調設備、検査装置、電車、ビル、住宅などなど挙げたらきりがない。Iの部分をしっかりやれば、Tの持つ強みで再び復活することも可能だと思わないか」

 そこで私は自分の会社について考えた。建設会社のTはなんだろうか。道路、橋、トンネル、ビル、大型施設と町を構成するものはほとんどだ。その中でうちの会社が強みを持てるのはどこか。

「パソコンや携帯電話では主導権を握られたのを、IoTでは得意のTを使って、今度は主導権をこっちが握りたいでしょう。そのためにはやはりオープン&クローズ戦略ってことですよね。

 でも、オープン&クローズ戦略を採用したとして、建設業がうまくパートナー企業を見つけられるんでしょうか。パートナーとして申し分のない実力のある企業を探すなんて」

 それを聞いて、権田さんが助言してくれた。

「自分が答えを知らなくても、適切なパートナーになり得る企業について知っている人を知っていれば、ネットワークはいくらでも広がるよ。

 うちの会社がシリコンバレーを含めて世界中を回っているのは、そのためだよ。紹介の紹介で意外な企業と知り合うこともできるし、こっちに提供するものがあれば、先方も喜んで会ってくれる。いきなりパートナー企業ができなくても、いろいろ手を尽くして、探していくしかないだろう。

 特にアメリカ企業はメリットがあるかないかで判断してくるから、いきなり会っても、メリットがあると思ってもらえれば定期的にコンタクトできるようになる。そうなれば情報が入るようになるよ」

 そう言いながら権田さんはステーキをモリモリ食べた。少し元気が出てきたようだ。権田さんは話を続けた。