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 ここからは、AIシステム構築のプロセスを具体的にイメージするために、AIを組み込んだ営業支援システムの構築を例に説明していきたいと思います。

 オフィス用品販売大手のA社の法人営業担当部署では、直近の顧客の行動履歴を基に、未購入商品の追加提案が見込める有望顧客をAIで予測し、営業担当者へ知らせるシステムを開発しようとしています。行動履歴のデータとしては、自社が運営するWebサイトの商品ページ閲覧履歴や、カタログの請求データ、見積もり・発注依頼などを持っています。

 A社はこれまで、顧客からのヒアリングや、問い合わせといった直接的な対話で得られた情報を基にニーズを把握して追加提案を行ってきました。しかし昨今、販売経路の多様化や商品点数の増加、受注数の小口化などによって、特定の大口顧客以外は営業担当者がフォローできない状況が発生していました。そこで営業担当者がフォローしきれない顧客の行動履歴をAIで網羅的にチェックし、追加提案の機会を見つけるシステムの導入を決断しました。

(1)要件定義フェーズ(業務要件定義、AI要件定義)

 A社は業務要件定義で、AIが果たす役割を「顧客の行動履歴を基にした受注確度予測」と定義します。

 A社は業務要件定義で、AIが果たす役割を「顧客の行動履歴を基にした受注確度予測」と定義します。そして「AI要件定義」の中で、受注確度予測に関するAIの機能・非機能要求を定めます(図1)。

図1●AIシステムを構築する際の要件定義のポイント
図1●AIシステムを構築する際の要件定義のポイント
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 では、A社のAIに関する機能・非機能要求を具体的に見てみましょう。

予測・判断に関する機能要求(業務機能)

 A社は顧客別・商品別の受注確度をAIで予測し、有望顧客を判定したいと考えています。そして、受注確度予測のモデルを生成するアルゴリズムの候補として決定木を応用したアルゴリズムである「ランダムフォレスト」を選択しました。

 AIの機能要求における重要なポイントは、「AIに何を予測・判断させるのか」、そして「その結果からどのような出力を得たいか(出力データの要求)」です。A社の事例ではAIに求める機能を「過去の受注顧客の行動パターンを基にした受注確度予測」と定義しています。

 これによりAIシステムのモデル生成に利用する学習データと、運用での予測・判断に用いる入力データが明らかになります。顧客の過去の行動履歴がこのAIシステムで利用する学習データです。

 そしてこの学習データを、行動パターンを導き出せるアルゴリズムに与えることで、受注顧客の行動パターンを学習させたモデルを生成できます。生成したモデルに、顧客の直近の行動履歴を入力することで、最新の受注確度を得られるようになります。これにより、入力データについての要求は「直近の行動履歴」であると定義できます。