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業務を記録して実行

 RPA自体はあくまで概念であり、企業がRPAを導入するためには何らかの道具が必要になる。その道具に当たるのが「RPAツール」だ。自前でRPAを実装することも可能だが、大半の企業は市販のRPAツールを利用している。

 RPAツールの主な役割は2つ。対象とする業務の「記録」と、記録した業務の「実行」だ。RPAツールはまず担当者が通常行っているPC操作を記録する。ここでいう操作は「Webブラウザーから特定のサイトにアクセスし、そのデータをExcelにコピーする」といった具合に、複数のソフトウエアをまたがるのが普通だ。

 記録が終了したら、その結果を繰り返す形で担当者の作業を実行する。記録した結果は必要に応じて変更できる。

 イメージとしては、Excelのマクロ機能が複数のソフトウエアをまたいで実行できると考えると分かりやすい。システム開発に携わっている方は、テスト自動化ツールを思い浮かべると理解しやすい。

 RPAツールは「ルールエンジン」のほか、HTML解析や画像認識などの技術を利用している(詳細は次回以降で説明する)。個々の技術に必ずしも新規性があるわけではなく、枯れた技術をうまく組み合わせて比較的安価に効果が得られるようにしていると言える。

働き方改革が追い風に

 RPAが注目されている背景にも触れておこう(図2)。日本でRPAが注目され始めたのは2016年後半ごろからだが、海外、特に欧米の金融機関では2015年ごろから関心が高まっていた。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業者が自社で受託した業務を効率化するために、RPAツールを適用し始めたのがきっかけである。

図2●RPAが注目を集める背景
図2●RPAが注目を集める背景
急速に需要が高まる
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 日本はこのような海外の動きに影響を受けるとともに、独自の事情がRPAの普及を後押ししている。働き方改革への対応だ。

 企業の規模や業種・業務を問わず、長時間労働の抑制が喫緊の課題となっている。一方、多くのオフィスで人手不足が問題になっている。長期的に国内労働人口の減少が避けられないなか、人手不足の状況が一段と悪化するのは間違いない。

 こうした課題を乗り切るために、ホワイトカラーの生産性向上は待ったなしだ。解決策としてRPAを使って事務作業を自動化し、生産性向上に取り組むのは理にかなっていると言えるだろう。

 RPAのソフトロボは理想的な労働リソースだ。人間とは違って長時間労働を気にする必要はない。夜間だろうが休日だろうが就労時間を問わずに作業する。しかも機械なので疲れを知らず作業を確実にこなす。作業スピードや正確性は多くの場合、人間よりも上だ。

 こうした利用者側の事情に加えて、RPAツールがより使いやすくなったことも、導入加速の要因となっている。画面や操作方法が改善されて、PC操作を代替するための記録と実行が容易になった。

 昨今のAIブームも背景として挙げられる。RPAが「AIを活用して高度な事務作業を実現するための第一歩」と位置付けられていることも、注目を集める一因となっている。

 PC操作を自動化するRPAは応用範囲が広く、他の技術や製品に比べると比較的導入しやすい。これまでIT化の対象にならなかった業務や、IT化の投資対効果が出ないと見られていた業務にも適用できるようになった。投資対効果も測定しやすく、短期間で投資を回収することが期待できる。

効果を引き出すノウハウが必要

 いま、RPAはブームとも呼ぶべき盛り上がりを見せている。オフィスの人手不足解消にRPAが効果を発揮するのは確かだ。

 もっとも、簡単に使いこなせるとは限らない。多数のロボットをどう保守・運用するか、RPAツールをどう選ぶかなど、効果を引き出すノウハウが欠かせない。

山本 英生(やまもと・ひでお)氏
NTTデータ 金融事業推進部 デジタル戦略推進部 部長
システム開発を経験後、金融機関のITグランドデザインなど多くのコンサルティング案件に従事、現在は金融分野でのITトレンドの情報発信からITグランドデザインなどのコンサルなど幅広く担当。
小泉 敦(こいずみ・あつし)氏
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部
デジタルビジネスソリューション事業部
BPOビジネス統括部 RPA担当 課長
公共系のシステム開発・導入を経て、NTTデータ経営研究所に出向し、5年間コンサルティング事業に従事。出向復帰後、本社経営企画部門にて営業改革やマーケティング活動に取組み、現在はRPAの専任組織にて市場開拓および事業推進・拡大に取り組む。