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 第3回の失敗事例で、田中さんはどうすればよかったのでしょうか。この事例では、普段は参加しない部長の存在がポイントになります。多忙な上級管理者である部長の視点で資料を作成し、プレゼンすることが求められます。その際に鍵を握るのが「エグゼクティブサマリー」です。「忙しい人はここしか読んでくれないかもしれない」と考えて、盛り込むべき重要事項は必ず収めるようにします。上級管理者がプレゼンの聞き手になるときはもちろん必要ですが、そうでないときも必要です。

 例えば、低価格な製品や小規模なシステムを提案するケースなら、顧客側担当者に気に入られれば即採用ということもあるかもしれません。しかし、複数部署の業務に関係する中規模以上のシステム提案をする場合、通常は顧客側組織の複数の利害関係者(ステークホルダー)が提案内容を厳しく評価することになります。ステークホルダーの中には、技術的なバックグラウンドを持たない管理者が含まれるケースが多く、システム規模やコストが高額になるにつれ、経営層などさらに上位レベルの判断や承認が必要となる傾向が強まります。

 こうした上位レベルの人は、提案するシステムを採用することで得られるビジネスや経済的メリットにのみ関心があり、技術的な話をいくら細かく説明しても響かないのが一般的です(図1)。エグゼクティブサマリーは、これら承認者や評価者に目線を合わせて書く必要があります。ただし、直接の交渉窓口になっているのは、もっと立場が下の担当者でしょう。そうした担当者は、提案を受け取ると、より上位のマネジメント層に購買の判断を仰ぐことになります。その際に、エグゼクティブサマリーが説得材料として使われる可能性があるということを意識します。

図1●伝えるべき人とその人の関心事を理解する
図1●伝えるべき人とその人の関心事を理解する
顧客の業務内容や組織体系、システム規模やコストなどによって変わるので、提案の都度考える必要がある
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