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 では、舵取り委員会(ステアリング・コミッティ)を見てみましょう。舵取り委員会は、要件の優先順位付け、予算措置、稼働時期の調整など重要事項を審議して、プロジェクトの舵取りをするのが役割です。単に「偉い人」を集めて、無難な報告を聞いてもらうのが目的ではありません。

舵取り委員会 部門横断の“大英断”を導く

 BP物産の経理部長が深刻な顔つきで述べ始めた。

「予算と期間の制約があることは理解していますが、『勘定科目コード機械チェック』の機能がなければ、経理部としては膨大なチェック作業を強いられることになります。新年度から、責任を持って月次の業務をこなせるとは到底申し上げられません」

 プロジェクト・オーナーの光石専務は、にこやかな顔を崩さず、シロカネ・ソフトウエアの太田PMの意見を求める。

「太田さん、何か打開策はありませんかね」

 経理部は納得していたはずだったのに…。不意打ちを食らった格好の太田PMは、口ごもった。

「予算だけの問題ならいいのですが、カットオーバーの時期が迫っています。今から新機能を開発するとなると、設計、製作だけではなく、検証も必要になります。しかも、新機能は多くの既存機能に影響します。これまで経理部門にご苦労いただいた移行や総合運用検証もやり直しになります。新機能を開発するなら、スケジュールを全面的に見直す必要があると思います。少なくとも3カ月は、稼働を遅らせないと」

 光石専務は、あごをなでながら考えた。

「4月のカットオーバーを逃すと、会計処理がいびつになってしまうのではないかな」  経理部長がうなずく。

「古い仕組みを延命することになりますので、伝票処理など、確かに余分な手間がかかることになりますね。現場教育や事務手順の徹底も必要です」

 太田PMが、経理部長に向かって質問した。

「4月からの3カ月間、勘定科目コードを人手でチェックするとしたら、どの程度の人数が必要ですか?」

 経理部長は、顔をしかめた。

「2、3人もいれば何とかなるだろうが、検証作業も続くことになるし、とてもそんな要員は出せませんよ」

 光石専務は、人事部長に視線を向けた。

「4月からの3カ月間、2人程度の派遣要員の手当ては可能だろうか」

「新年度のことですし、社長決裁さえあれば」

 経理部長が、ふいに顔を輝かせた。

「なるほど、そうか。派遣でチェック要員が手配できるなら、3カ月程度はしのげますね」