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 長方形、正方形、楕円、菱形、立方体、円柱、吹き出し、爆発マーク―。こうした何種類もの図形が使われた図を見たことはありませんか。あるいは、あなた自身、そういう図を日ごろ作っていないでしょうか。

 一つの図にたくさんの種類の図形が入っていると、それだけ分かりにくくなります。図を見る側は、「これは長方形なのに、こちらはどうして楕円なのだろう」「長方形が並んでいる中でこれだけ直方体の形になっているのはなぜだろう」といった具合に、異なる図形が使われている理由が気になるからです。ところが図の作成者はというと、深く考えず図形の種類を変えていることがしばしばあります。

 やたらと多くの種類の図形を使うことをはじめとして、図形の使い分けについての間違いは少なくありません。ぜひ皆さんに、図形の適切な使い方を知ってほしいと思います。

 第6~7回では生徒役として、架空のITエンジニアである中川さんに登場してもらいます。第4~5回に登場した若手ITエンジニア山田さんの友人という設定です。

 それでは、中川さんが作ったイマイチな図を題材に、図形の使い分けのセオリーを解説していきます。

図形が整然と配置されているのに分かりにくい

 中川さんが、山田さんから紹介されて、筆者のもとへ相談にやってきました。中川さんは、ある製造業M社のシステム部に所属しているITエンジニアです。最近、業務改善ワーキンググループのサブリーダーに任命され、開発プロセスの改善を推進しています。中川さんらのワーキンググループでは、M社におけるシステム開発のタスクについて、自社で行うかITベンダーに外注するかという役割分担を見直すことで、コストを削減しようと考えています。

 ワーキンググループでの検討結果を基に、中川さんは、どのタスクを外注に切り替えるとコスト削減になるのか、あるいはどのタスクをシステム部主体に換えるとコスト削減になるのかを説明する図を作りました(図1)。それをワーキンググループのリーダーにレビューしてもらったところダメ出しをされたとのこと。中川さんは、どう修正していいか分からず、筆者を訪ねて来たというわけです。

図1●開発のタスクごとの作業主体を表した見にくい図
図1●開発のタスクごとの作業主体を表した見にくい図
システム開発のタスクごとの作業主体を、四つのフェーズに分けて表した図である。いろいろな種類の図形を使ったことで、分かりにくくなっている
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