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 ITエンジニアにとって、会計は“永遠の苦手科目”──。そう感じることがあります。コンサルタントとして業務システムの導入などに携わるとき、開発メンバーのなかに、会計知識に関心のないITエンジニアの方を見かけることさえしばしばです。

 「会計は、よく分からないんですよ」というメンバーがいると、ヒヤヒヤものです。業務システムで取り扱うデータの一部は、会計システムに渡ります。そのため最終的にどのような会計処理をするのかを分かっていなければ、本来はシステムを開発できないはずです。重要な「常識」の一つがないわけですから、その人の思いこみで間違った機能が実装されかねません。

 偉そうなもの言いに聞こえたかもしれませんが、かくいう筆者も、かつて某メーカーの社内SEとしてシステム開発に従事していたころ、会計知識はまったくありませんでした。公認会計士となった今振り返ると、よくあれで業務システムを開発していたものだ、と背筋が寒くなるばかりです。

 筆者は当時、生産管理システムを担当しており、会計処理のことを考えずに仕様を決定することが多々ありました。そのたびに先輩から「会計処理に問題が生じる」と指摘されたので事なきを得ましたが、まったく無知と思いこみは恐ろしいものです。職場の上司や先輩には、本当にご迷惑をおかけしました。

会計を学ぶとメリットが大きい

 現在、公認会計士という立場からITエンジニアの方々に会計知識を教えるようになったのも、自分が犯したような間違い(事故)を未然に防ぎたいという思いからです。そもそも会計は、日常業務に関する絶対に守らなければならないルールです。会計を知らずにシステムを開発するのは、道路標識の見方を知らずに車を運転しているのと同じなのです。

 逆に言えば、会計知識をしっかりと持つことで、ITエンジニアとしての価値が高まります。特に近年、会計制度がめまぐるしく変更され、これが新しいユーザー・ニーズを生み出しています。新たにIFRS(国際財務報告基準)注1を導入する企業への対応にも、会計知識は欠かせません。ユーザーの期待に応える、またはユーザーの期待を超えるために、会計知識は大きな武器になるのです。

 しかも会計知識を身に付ければ、ほかにもお得な特典が盛りだくさんです。例えば、会計知識は業務知識を身に付けるうえでのベースになりますから、ユーザーの業務に対する理解のレベルが段違いに深まるでしょう。

 管理職になったときにも、会計知識が大いに役立ちます。社内のマネジメント業務は、「予算」という会計の仕組みのもとで行うからです。同じことは、予算責任を持つプロジェクト・マネージャやリーダーになったときにも言えるでしょう。

 また仕事の面ばかりでなく、株式投資などの財テクでも会計知識は役に立ちます。ずる賢い人にだまされないためには、投資家としての知識を身に付けることが必要です。その根幹となるのは、やはり会計知識なのです。

 会計は決して難しくありません。そのメリットを考えると、お得度は抜群に高いと言えます。以前に挫折した方も、これまで避けてきた方も、この講座でぜひ会計知識を身に付けてください。