全4503文字

 「黒字倒産」という言葉を聞いたことはありませんか。会計上、利益を出しているにもかかわらず、会社が倒産してしまうことを言います。

 一方で、毎年のように赤字を垂れ流していても、倒産しない会社が存在します。では会社は、どんなときに倒産するのでしょうか。それは、約束していたキャッシュを支払えなくなったときです。資金繰りに行き詰まってキャッシュを用意できなくなったとき、会社は倒産するのです。

貸借対照表と損益計算書の死角

 キャッシュの有無が会社の生死を決するのですが、「貸借対照表(B/S)」と「損益計算書(P/L)」を見ても、キャッシュの状況は把握できません。

 貸借対照表の「資産」には、現金や預金の残高が示されます。しかし貸借対照表は期末の一時点における状況にすぎませんから、会計期間中にどれだけキャッシュの出入りがあったかを知ることはできません。

 一方、損益計算書は会計期間中の取引を集計したものですから、キャッシュの出入りも分かる気がします。しかし、そうではありません。

 その理由を理解するには、収益と費用を計上するタイミングに関する考え方である「現金主義」と「発生主義」の違いを知る必要があります。現金主義では、キャッシュの出入りがあった時点で初めて収益と費用を計上します。これに対して発生主義では、キャッシュの出入りが伴わなくても、取引が発生した時点で収益と費用を計上するのです。

 現金主義のほうが、キャッシュの移動という客観的な事実に基づいて取引が認識されるため、確実な記録方法に思えるかもしれません。しかし掛け売りや掛け買いなどの信用取引が中心である現代、キャッシュの移動に基づいて収益や費用を計上していては、実態を反映した会計の数字になりません。そこで現代の会計では、発生主義を採用しています。そのため損益計算書における収益と費用は、キャッシュの収入と支出とは異なるのです。

 さらに、借入金を増やしたり貸付金を減らしたりといった、利益に影響を与えない取引は、そもそも損益計算書には反映されません。

 貸借対照表と損益計算書だけではキャッシュの情報を得られないため、専用の表を作成することになりました。それが、今回のテーマであるキャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement:C/F)です。