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「地盤」と「構造物」はワンセット

 住宅やビル、橋梁やトンネルなどの構造物には重量があります。その重量を受け止め、下から支えるのが「地盤」です。構造物を建設しようとすれば必ず地盤が必要になります。すなわち、構造物と常にワンセットで扱われる工学的な専門用語が「地盤」であり、評価の対象は構造物の荷重に見合った地盤の強度となります。

 もっとも、広い意味では地盤に触れない構造物がないわけではありません。浮力によって浮かぶ水上の船舶、磁力の反発を利用したリニアモーターカー、絶えず揚力を発生させて落下を先送りしている航空機──などがあります。これらはいずれも、重力に対抗するための何らかの力を必要としています。

地盤は建材の一種

 地盤は自然に形成され、工場生産されるものではありません。建設現場に行けば必ずそこにあるものです。建材店に地盤を発注して現場に搬入する、などという話は聞いたことがありません。

 しかし、地盤は建物に不可欠であるという意味では建材の一種であるといえるのです。その現場に既に存在しているので建材と呼ぶ感覚にはなじまないかもしれませんが、そこにこそ、大きな誤解を生じさせる原因があります。重量のある建物を下から支えるのが基礎であるとすれば、地盤はさらに下層からその基礎を支えている大切な建材なのです。

図・地盤は建材の一種
図・地盤は建材の一種
基礎は建物全体を支え、地盤は基礎を下から支える(図:髙安 正道、日経 xTECH)
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地盤にも「品質」がある

 建物を構成する建材には必ず機能が求められます。その機能を発揮させる「品質」と「性能」が備わっていなくてはなりません。建材には製品としての正規品であることを裏付ける保証書や仕様書が付いてきます。ところが、地盤にはそのような性能評価書ははじめから付いているわけではありません。それを不思議に思わないのには訳があります。目的地に到着するまで地盤は地続きで存在し、まるで空気のようにそこにあるのが当たり前だからです。

地盤の品質で「基礎」が決まる

 2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)では、柱、梁や桁などの横架材、筋かい、基礎などの戸建て住宅を構成する「構造耐力上主要な部分」(基本構造部分)を列挙して、設計・施工者に10年間の瑕疵担保責任を義務付けています。

 「基本構造部分」に「地盤」は含まれてはいませんが、国土交通省が編集協力している同法の解説書(下の「豆知識」参照)によれば、地盤についてもこの瑕疵担保責任が免責されるわけではないことが読み取れます。

[豆知識]地盤に配慮しないと法律違反になることも

 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」について、国土交通省が編集協力している解説書は次のように記しています。「住宅の地盤は、基本構造部分には含まれないが、住宅の設計・施工を行う場合には、その前提として地盤の状況を適切に調査した上で、調査結果に対応した基礎の設計・施工を行うべき義務があるため、例えば地盤が軟弱であるにもかかわらず、地盤の状況を配慮しない基礎を設計、施工したために不同沈下が生じたような場合には、基礎の瑕疵として本法の対象となる」(「必携 住宅の品質確保の促進等に関する法律 改訂版2019」33ページ、創樹社編集・発行)。

 地盤は自然に形成されるものなので、構造物の品質を規定する法律である同法では「基本構造部分」に含めていません。ただし、地盤の不同沈下によって基礎にひび割れが生じるので、その程度によって瑕疵であるかどうかを判断しようとしています。

髙安 正道(たかやす・まさみち)
NPO住宅地盤品質協会 広報委員
髙安 正道(たかやす・まさみち) 1953年、那覇市生まれ。東京都立杉並高校卒業。早稲田大学商学部中退。NPO住宅地盤品質協会の広報委員、株式会社「地盤審査補償事業」審査員を務める。本講義は同氏の著書「日経ホームビルダー・住宅現場手帖 地盤診断」(日経BP)に、同氏の協力を得て加筆・修正のうえ、日経 xTECHが再構成した。