全4473文字
PR

 DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトのシステム開発の流れは基幹系システムとは異なります。では、どんな手順に沿って進めればよいのでしょうか。

 まず、DXプロジェクトの開発の流れ(以下、開発プロセスと呼びます)の全体像を見てみましょう。図1に、DXプロジェクトの代表的な開発プロセスを示します。プロジェクトの内容や予算・体制などによって適切な開発プロセスは異なりますが、「AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)などリスクの高い新技術を利用する」「新規ユーザー向けサービスを開発する」といったDXによくあるプロジェクトの場合、こうした開発プロセスが1つのモデルになります。

図1●DXプロジェクトの開発プロセスの代表例
図1●DXプロジェクトの開発プロセスの代表例
[画像のクリックで拡大表示]

 図1を一見して、「ウオーターフォール型だ」と意外に感じたかもしれません。DXプロジェクトの場合、要件定義から設計、開発と順を追って進めていくウオーターフォール型ではなく、短いサイクルで開発やテストを繰り返すアジャイル型が適していると考えている人は多くいます。

 しかし、実はDXに常にアジャイル型が適しているとは限りません。ウオーターフォール型が向いているプロジェクトも多数あるのです。

 そこで今回は、図1のようなウオーターフォール的な開発プロセスを基に、プロジェクトの進め方をフェーズごとに解説します。アジャイル型を採用すべきなのはどんなときか、どのように取り入れるべきかについては、次回詳しく説明します。

サービスの企画と要求定義をする

 まずフェーズ①で、要件・要求定義を実施します。DXプロジェクトでは新しいサービスを開発するため、既存業務というものが存在しません。

 そこで、まずはサービスの企画とサービス要求定義を行います。それぞれについて説明しましょう。

 まずサービスの企画とは、以下の3つを明確にすることです。

  • 顧客(サービス利用者)は誰なのか
  • どんな課題を解決するのか
  • 何を使って解決するのか

 これが曖昧だと、要件定義段階で、何を盛り込むべきか判断軸がぶれてしまいます。この3つは、しっかり決めておく必要があります。

 この3つがしっかり決まっているように見えても、そこにユーザー視点での分析がなされていない企画に触れる機会も多くあります。この手の企画は、本当にその課題やニーズが存在するか確認が取れていないため、失敗する(誰も使わないものが出来上がる)リスクが高くなります。