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 代表的なモーターの種類と特徴を表1に示す。この表から分かるように、コスト以外では永久磁石同期モーターに優位性がある。

表1 代表的なモーターの種類と特徴(作成:筆者)
表1 代表的なモーターの種類と特徴(作成:筆者)
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 永久磁石同期モーター(PMSM)には、表面磁石型と埋め込み磁石型の2種類がある。表面磁石型同期モーター(SPMSM)*1は、磁石の磁束を有効に利用できるモーターである。一方、埋め込み磁石型同期モーター(IPMSM)*2は、磁石によるトルクとリラクタンストルク*3の両方を利用できるモーターである。このモーターはローター(回転子)の中に磁石を埋め込む構造であるために、遠心力による磁石の飛散が起こりにくく、高速回転での使用に向き、安全性も高い。永久磁石同期モーターは、磁石破損が起きると、破片がローターとステーター(固定子)の間に詰まり、急停止するなど回転できなくなる可能性がある。そこで、自動車の電動ステアリングシステム(EPS)など、安全性が要求される重要な用途では、埋め込み磁石型同期モーターが使われることが多い。

 ブラシ付きDCモーター(DCM)はコスト性能比に優れ、制御回路も不要で、電圧をかければ動く手軽さなどから、多用されている。しかし、接触面があるために、ブラシの寿命やノイズの発生の問題がある。主に、動作頻度が低く、精密制御が不要な用途で使われている。例えば、自動車のドアガラスの昇降やワイパーモーターなどである。

 SRモーターは冒頭で述べたように、永久磁石を使用しないモーターである。回転トルクは、巻き線によって作られた磁極にローターの突極部が吸引されることで発生する。このモーターは、回転時に大きな騒音や振動が発生するという問題があったが、最近は構造や材料の改良が進み、騒音や振動の少ない実用的な性能を得られるようになってきた。

 インダクションモーター(Induction Motor:IM)は誘導モーターとも呼ばれる。三相誘導電動機は、日本工業規格JIS C 4034-30「回転電気機械-第30部:単一速度三相かご形誘導電動機の効率クラス(IEコード)」で規定される。トップランナー化により、効率クラス分類が導入され、現在は「プレミアム効率」とされるIE3が主流だが、今後はさらに効率化が進んだIE4やIE5が主流となるだろう。

 これらの中で、特に車載用として使われるモーターについて考える。現在、一般的な自動車1台に使用されているモーターの数はおよそ50~100である。高級車では150におよぶ。このうち、動力を発生する主機を除いたモーターには、さまざまな種類が使われている。低コスト化が優先される場合にはブラシ付きDCモーター、低騒音・長寿命が重視される場合は永久磁石同期モーター(ブラシレスDCモーター)、位置制御にはステッピングモーター、超薄型化が求められる場合はプリントモーターが使用されている。この他にも、低騒音で低回転・高トルクを実現する超音波モーター(USM)がある。特に漏れ磁束を嫌う用途では、磁束の発生がない超音波モーターを使用することがある*4