全1512文字

 近年、古い建物を改修して利用する事例が増えてきました。以前は、古い建物は建て替えるというスクラップ・アンド・ビルドが主流でしたが、耐震補強などの必要な工事をしながら使える建物を使い続けていこうという風潮が強くなってきています。

 建物の改修計画で登場するキーワードに「既存不適格」があります。既存不適格であるかどうかによって、計画できる範囲や必要な工事内容は大きな影響を受けます。建物の改修を考えたときには、まず、既存不適格かどうかを確認することが大切です。

建築時には法適合していた「既存不適格」

 既存不適格とは、現在ある建物が現在の建築基準法やその関連法規に適合していない状態を指し、こうした建物を既存不適格建築物と呼びます。前提となるのは、建物を建てた時点では当時の法規に適合していたこと。建築基準法に則って建築したけれども、その後に法改正があったために現在は法に適合しない部分が生じてしまった状態を指しています。

 建築基準法は戦後間もない1950年に制定され、その後も技術の進化や社会のニーズに合わせて次々に法改正されてきました。震災や火事をはじめとする大事故が起こると、耐震性や耐火性を高めたり、エレベーターの仕様を改善したり、時々の教訓を反映して建物の安全性を高める改正を施しています。これは、新築される建物の安全性を高める一方で、以前建てた建物は現在の基準から取り残されていくという状況を生み出します。

 とはいえ、法改正の度に既存の建物を全て現行法規に適合させようとすれば多大な工事費がかかり、現実的ではありません。そのため、増築や改修などをしないで現在の用途のまま利用している限りは、既存不適格の状態を維持できることになっています。

 なお、ここで気を付けたいのは、既存不適格建築物とはあくまでも「建築時には合法だったもの」を指すことです。建築時点で当時の法規に適合していない建物は「違反建築物」で、まったくの別物。違反建築物は行政による是正指示の対象となり、違反内容がひどい場合には取り壊しを求められる可能性もあります。既存不適格建築物か違反建築物かによって天と地の差があるので、中古の建物を購入する場合には注意が必要です。

「既存不適格」と「違反」の違い
「既存不適格」と「違反」の違い
建設時は法律に適合していたが、その後の法改正などで現在は適合しなくなった場合が「既存不適格」。建築時から法律に適合していなかった「違反」とは異なる(資料:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]