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 デバイスの損失を考えるときに重要になるのが、立ち上がり時間trと降下時間tfである。時間軸で見ると、オン命令が入力してから電流が上昇して、一定時間後に最終電流に達する。この最終電流の10%の状態から90%の状態に達するまでの時間がtfである。逆に、オフ命令により、90%から10%に降下するまでの時間がtfである。この間は、半導体はオンでもオフでもない状態で動いている。このため、損失エネルギーがデバイス内部にたまって発熱が起きる。これがスイッチング損失である。

 スイッチング損失Pd(SW)は計算によって概算できる。例えば、バイポーラトランジスターの場合は、定数、コレクター─エミッター間電圧(供給電圧)、コレクター電流、スイッチング時間(tr+tf)、スイッチング周波数(PWM周波数)の積になる(式(1))。

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 また、定常損失Pdはトランジスターの「飽和電圧×電流×PWM信号のオン時間の比率」となる(式(2))。

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 これらの合計がトランジスターの全損失となる。一方、MOSFETの場合、コレクター損失に相当するのがドレイン損失Pdである。スイッチング損失Pd(SW)は、ドレイン─ソース電圧、ドレイン電流、スイッチング時間(tr+tf)、スイッチング周波数(PWM周波数)を使って計算できる(式(3))。

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 また、定常損失はオン抵抗RDS(ON)、定常電流を使って、下の式(4)で表される。

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 これらの合計が全損失となる点は、トランジスターと同じである。

 一見して分かるように、いずれの場合でも損失を低減させるには、trとtfの小さい、すなわち応答性の高いデバイスを選択する方法がある。ただし、コスト上昇は避けられない。そこで、1つの対応として、スイッチング周波数(PWM周波数)を下げる方策がある。一般に、産業用では人間の可聴域での振動騒音発生を回避するために、20kHz前後の周波数での制御が行われている。これを10kHz程度にすればスイッチング損失電力は約半分に、5kHzなら約1/4に激減する。低周波数化は、騒音の問題はあるが、目的や使用状況によって選択できる。