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 顧客が求める製品を提供するために、その品質を出荷前に確認するのは当然のことだ。生産工程が終わった後に、品質部門が出荷検査という位置づけで製品が仕様を満たしているかどうか最終確認することはその代表例だろう。また、顧客サービス部門がユーザー試験などと称し、生産工程で確認している項目の追確認だけではなく、定期的に顧客目線でさまざまな角度から製品へのチェックを入れることなども、顧客満足度を高める有効な手段として活用されている。しかし一方で、検査をすれば品質は保てると安易に考えてしまうことに対しては、本当にそれでよいのかと考えてみる必要がある。

 工場の使命は、顧客の要望(営業部門の要望)に対応するために生産計画を組み、それを100%確実に達成することだ。しかし、何かトラブルがあった際には、当然ながら生産が遅れたり、出荷が止まったり、必要な出荷数量が確保できなくなったりする。これは工場の使命を満足できないことに他ならない。

 それ故に、何かトラブルが発生した時に工場のメンバーが考えることは「いかに素早く問題を解決し、生産や出荷能力を確保して、トラブルによる生産や出荷への影響を回復するか」というものだ。この価値観に従うと問題の根本原因を調査し、その原因対策をちまちまと実施することよりも、即座に検査を追加し、出荷品質を確保して、当日の出荷を確保する。これはある意味、理にかなっていると言えなくもない。そのため、残念ながら、多くの工場はこの論理で動いているというのが実態だ。