トラブルは発生してから修正するのではなく、起こる前に未然に防ぐ──。トヨタ自動車の設計者にはこのことが強く求められます。問題を未然に防ぐには、しかるべき考え方や方法があります。この講座ではそれらを体系的に解説していきます。
問題を未然に防ぐために、最も重要なことは「機能の欠損」です。お客様に安心かつ安全な製品を届けるために、お客様から求められているニーズを満たす「機能」を確実に実現しなければなりません。やみくもに、製品の問題点を列挙しても意味がありません。製品はボルト1本にも求められる機能があり、その機能が欠損してしまったときに、大きな問題が発生してしまいます。
機能から問題の未然防止を検討するための全体像は図のようになります。
まずは大きな問題が発生しないように、「機能」に着目した問題の未然防止について検討していきましょう。
ツールが形骸化する理由
設計において問題の未然防止を図るために、さまざまなツールが開発されています。有名なのは故障モードの影響を解析するFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)やDRBFM(Design Review Based on Failure Mode)で、多くの企業が利用しています。しかし、正しく使われていないケースが目立ちます。そのためか、設計者にとってやっつけ仕事になってしまい、結果として問題の未然防止ができていないというのがよくあるパターンです。
設計者の心の声に耳を澄ますと、「時間がなくて納期が迫っている状況で、時間がかかる『FMEAをやれ』と言われても無理だよ。とりあえず過去の資料をコピーして、少し内容を変えておけばバレないだろう」などといった言葉が聞こえてきそうです(少なくとも筆者には心当たりがあります)。
では、なぜ問題の未然防止を図る際に、例えば故障モードなどを考えるのに時間がかかるのでしょうか。また、設計者が「やらされ感」を持つことになるのでしょうか。これらの原因を解決しなければ、いつまでたっても設計者はやらされ感を抱えたまま仕事をすることを強いられてしまいます。