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 FMEA(故障モード影響解析)やDRBFM(Design Review Based on Failure Mode)を必ず実施すること──。開発設計プロセスにおいて、こう決めている企業は少なくありません。中でも、自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格である「IATF16949」の認証を取得している会社では必須事項です。

 ところが、本来のFMEAやDRBFMを実施する目的である「潜在的な故障モード」をきちんと抽出できていない企業が多いというのが現実です。

 FMEAやDRBFMが目指すのは、問題の未然防止です。未然防止のために問題の中に潜在的に眠っている内容を抽出することが、FMEAやDRBFMを実施する意味なのです。実際、IATF規格では、潜在的故障モードを抽出することを明確に求められています。

 では、皆さんはFMEAやDRBFMの「故障モード」にどのような内容を記載していますか。次のような内容を故障モードに記載しているのではありませんか?

  • [1]制御が止まる。
  • [2]クルマが止まる。
  • [3]可動部分が動かない。
  • [4]部品が故障している。
  • [5]火災が発生している。

 これらの[1]~[5]は「故障」の状態を言葉で表しただけに過ぎません。故障モードとは、「故障がどのような状態で発生するか」という意味です。従って、故障がどのような「機能の欠損」や商品性の欠如によって発生するのかをきちんと見極めなければなりません。

 故障は「Loss of function」であり、故障モードは「Manner in which an item fail」です。つまり、アイテムの故障の起こり方であり、起こった故障の状態ではないのです。

 故障モードに故障の状態を記載してしまうと、原因の抽出が曖昧となり、その結果、対策も不十分な内容になってしまいます。それではせっかく時間をかけてFMEAやDRBFMを実施する意味がありません。そうではなく、故障の状態から眠っている潜在的なモードを抽出することが重要なのです。