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 日本では長年、巨大地震による建物の被害に悩まされ、災害が起こるたびに対策を講じてきました。構造計算の方法も進化しました。しかし、現在立っている木造戸建て住宅の多くは厳密な構造計算なしで建築されていることをご存知でしょうか。

 これは違法行為ではなく、建築基準法で認められているものです。木造の場合、「階数2以下」「延べ面積500m2以下」「軒の高さ9m以下」「建物高さ13m以下」を全て満たす小規模な建物であれば、構造計算をしなくてもかまいません。鉄筋コンクリート造や鉄骨造など、木造以外の建築物では「平屋建て」かつ「延べ面積200m2以下」の場合も同様です。こうした建物を「四号建築物」(建築基準法20条1項)と呼びます。

 構造計算を省略できるとはいえ、やみくもに建てられるわけではありません。「仕様規定」と呼ぶ一定の条件を満たす必要があります。以下、木造の戸建て住宅に限定して話を進めましょう。

「四号建築物」は構造計算が不要
「四号建築物」は構造計算が不要
木造でも木造以外の構造でも、一定規模以下の建築物では構造計算が免除されている(資料:日経クロステック)
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阪神大震災を教訓に規制強化

 木造戸建て住宅に関する仕様規定は大きく2つに分類されます。簡易な計算を行うものと、決まりごとに則していることを確認するものです。簡易な計算には「壁量の確保」「耐力壁のバランス」「柱頭・柱脚の接合」の3種類があります。

 壁量計算は1950年に建築基準法ができたときに導入された方法で、筋交いや構造用合板を入れた構造上強い壁(耐力壁)を一定量備えた設計になっていることを確認します。

 もともとは壁量計算をすることにより、大きな地震や強風に耐えられる木造住宅の強度を確保できるという考え方でした。その考え方が大きく覆されたきっかけは1995年の阪神大震災です。この巨大地震では、耐力壁の総量は確保できていても壁の配置が偏っていたり、柱が強固に固定されてなかったりしたために木造戸建て住宅が倒壊する被害が多発しました。これらを教訓に、2000年の法改正で導入されたのが「耐力壁のバランス」と「柱頭・柱脚の接合」の確認です。

 耐力壁のバランスは、「4分割法」という簡易な計算方法などを用いて確認します。4分割法は、外周部に耐力壁をバランスよく配置できているかを検証する方法です。例えば、密集した住宅地では、道路に面した1階部分にピロティー状の駐車場を設けた住宅を見かけることがあります。こうした住宅は道路沿いの耐力壁の量が少なく、耐力壁のバランスを満たさない可能性があります。その場合には駐車場の柱まわりを補強するなど、何らかの対策を施す必要があるのです。

 柱頭・柱脚の接合については、個々の柱にどの程度の引き抜き力が働くかを簡易計算したうえで、その引き抜き力に耐える強度の金物で柱の上下端を固定することになっています。これは、阪神大震災で、大きく揺さぶられた木造住宅の柱が引き抜けてしまって倒壊した被害に対処したものです。

木造四号建築物に求められる仕様規定
木造四号建築物に求められる仕様規定
構造計算しない場合でも仕様規定への適合が求められる。簡易な計算によって一定基準への適合を確認するものと、寸法や施工方法などに関する仕様への適合を確認するもので構成される(資料:日経クロステック)
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 簡易な計算による確認のほかには、一定の仕様を満たすかどうかの確認が必要です。計算はなく、部材の寸法、接合方法、補強部位、防腐措置などが建築基準法に沿っているかどうかを確認します。

 確認する部位は、屋根ふき材、梁などの横架材、火打ち(水平方向の斜材)、筋交い(垂直方向の斜材)、柱、土台、基礎です。地面に近い部分については、木材の防腐措置も確認します。これらの規定は寸法や接合方法を具体的に示したものもあれば、「震動や衝撃によって脱落しないようにしなければならない」という程度のものもあります。また屋根ふき材については、必要な強度を具体的に示した条文はありません。