全2210文字

 システム開発プロジェクトはさまざまなメンバーの共同作業です。所属も、経験も、年齢も異なるメンバーが心を合わせるのは、容易なことではありません。

 そして今、IT部門にはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進役としての役割が期待されています。その役割を担えるプロジェクトチームを築くために、プロジェクトマネジャー(プロマネ)はどのような動き方をするべきなのでしょうか。本講座では、ある物流会社のIT部門を舞台に、プロマネに求められるスキルを考えていきます。


登場人物

野島 陸(のじま りく)
大手物流会社、志野物流のIT部門で課長を務める39歳。PMP(プロジェクトマネジメントの国際資格)を所持し、海外勤務経験もある。プロジェクトを「楽しく」運営し、成功させることを信念にしている。

高森 太一(たかもり たいち)
志野物流IT部門所属の30歳。新卒8年目で係長。今回、初めてプロジェクトリーダーを務めることになり、張り切っている。まだ経験不足なところもあるが、前向きな性格から将来を有望視されている。

勝見 かりん(かつみ かりん)
志野物流入社2年目。1年間の入社時研修を終えてIT部門に加わり、初めてのプロジェクトチームに参加中。まだ右も左も分からないが、若さとやる気でチームを明るくしている存在。

今泉 義夫(いまいずみ よしお)
志野物流のIT協力会社、カミヤシステムズの社員。58歳。伝説のCOBOLプログラマーとして以前から志野物流のプロジェクトに何度か参画している。今はカミヤシステムズ側のリーダーとして、主にレガシーシステムの解析業務を担当している。

 志野物流のIT部門で課長として働く野島陸は、39歳。IT部門は目下、自社のDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、基幹系システムの刷新に取り組んでいる。

 野島はそのうちの1つ、会計システムの見直し作業のPM(プロジェクトマネジャー)に任命された。社内外のメンバーによるチームを組織し、いよいよプロジェクトが始まった。

 初日、チームの顔合わせのためのミーティングが行われた。そこで初めてメンバーが各自のバックグラウンドを説明し、決意を表明するのが恒例だ。

 この日は、協力会社であるカミヤシステムズから、常駐SEとして3人が新たに加わった。3人は要件定義検証チームに入り、上流工程を担当する予定だ。

 リーダー役を務めるのは、今泉義夫58歳。元々、COBOLの上級プログラマーとして長年活躍してきた。志野物流の会計システムの一部はCOBOLで書かれており、今泉はCOBOLの腕を買われて今回のプロジェクトに加わることになった。今泉のミッションは、従来システムと刷新後のシステムに食い違いが生まれないか、要件定義工程で検証することだ。

 顔合わせは和やかに終わった。メンバーは皆、それぞれに熱意を持っているようだ。特にカミヤシステムズの今泉は、COBOLの豊富な経験を生かせるとあってひときわやる気を見せていた。

 だが数日後、プロジェクトルームでもめている声が聞こえた。声の主は今泉だ。ミーティングから戻った今泉に「何か問題でもありましたか?」と野島が尋ねると、思いもよらない回答が返ってきた。

 「高森さんとは一緒にできません」

 高森は志野物流の係長。野島の右腕としてこのプロジェクトの開発リーダーを任せている。開発方法に対する意見の相違が、強い言葉での応酬に発展したようだ。

 野島は冷静になるよう自分に言い聞かせながら、「少し整理して話を聞かせてください」と今泉を会議室に呼んだ。