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 基幹系システムの刷新プロジェクトでは、一から自社で作り込むスクラッチ開発か、パッケージ製品を利用するかがは重要なポイントになります。DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として基幹系システムの刷新に取り組む志野物流でも、この点をめぐって議論が巻き起こっていました。

 その様子を見ながら、プロマネとしての動き方を考えてみましょう。


 志野物流が進めている会計システムの刷新プロジェクト。その大きな目的の1つが、つぎはぎだらけの現行システムを改修し、全国のユーザーが同一の手順で操作できるようにすることだった。将来を見越して、グローバルで使いやすい仕組みにすることも重視されていた。

 現行システムは、典型的なサイロ型。COBOLやアセンブラなど複数の言語が使われ、データベースもバラバラである。志野物流では書類が全社で標準化されておらず、拠点や部門ごとに独自の書式を使っていた。それに対応するために、こうした作りになっていたのだ。

 開発者にとっては自分の思いのまま、ユーザーのリクエスト通りにプログラムが組める利点がある。小回りの利くユーザーフレンドリーなシステムとして社内では評価されており、業界内でも評判が高かった。半面、その複雑さのためにシステム運用担当者の苦労は筆舌に尽くしがたいものがあった。

「それはスクラッチ開発するということですか?」

 野島らの作業は、機能要件定義が終盤を迎えていた。次のフェーズに向けて、プロジェクト内部でどのような開発方針を採るのかブレインストーミングが始まっている。今日はその第2回目の会議が開催されている。

 プロジェクトのリーダー役、高森が口火を切った。「先日の機能確認でも分かったのですが、拠点によって業務の流れが違うところがたくさんあります。それは是正しないとまずいですよね。現場のニーズを最優先に考えたいのはやまやまですが、同一の業務で拠点や部署によって流れが異なるのは何とかしたいのです」

 カミヤシステムズの今泉も同意した。高森とは一時対立したが、最近では関係性がずいぶん好転している。「そうですね、メンテナンスやガバナンスを考えると同一業務は標準プロセスであるべきですよね」

 野島にも異論はない。標準の業務オペレーションを定めた上で、それに対応したシステムを一から作り上げていこうという方針で意見がまとまりかけていた。

 「それはスクラッチ開発するということですか?」そこで声が上がった。入社2年目の勝見かりんだ。