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 スクラッチ開発かパッケージの採用か――。第3回で、野島は先輩の石川に悩みを聞いてもらいました。入社2年目の勝見かりんの発言がなければ、従来通りスクラッチ開発を前提にプロジェクトが進んでいたかもしれません。

 上流工程で経験の浅い若手があのような意見を言うことを意外に感じた人もいるでしょう。しかし誰もが積極的に方針作りに参画することは、これからのプロジェクト運営に重要です。従来は上層部が方針を決め、他のメンバーはそれに従ってプロジェクトを推進するスタイルが一般的でしたが、今後は通用しません。特にアジャイル開発のように柔軟に方針を変更しながら進めるプロジェクトでは、積極的に意見を出し合って優れたものを採用していく姿勢が欠かせません。

 勝見がものおじせずに意見を言えたのは、そうしたチームの雰囲気があったからです。野島のチームづくりがうまくいっていたといえるでしょう。

ポイント①
  • プロジェクトの方針は上層部だけでなく、メンバー全員で作成するのが望ましい
  • 年齢や経験にかかわらず積極的に意見が言える雰囲気づくりがPMの責務

 勝見の言うように、現在のアプリケーション提供形態はクラウドとパッケージが主流になっています。クラウドには、社内のインフラ構築が必要ないため初期コストを抑えられる、迅速にシステムを稼働させられるなどのメリットがあります。

 またパッケージを採用すれば、開発の手間やコストを減らせる、セキュリティー対策の負荷を抑えられるといった利点があります。グローバル展開されているパッケージの場合は、国際会計基準などの国際標準に対応していることもポイントです。全社でパッケージを採用することで、国際標準に沿った統一的なシステムを構築できます。

 志野物流では、会計システムを将来的にグローバルで使用する計画を立てています。この場合、ERP(統合基幹業務)パッケージを採用する利点は大きいと考えられます。

 ただし、パッケージを採用するには業務の標準化が不可欠です。つまり、ユーザーに大きな協力を得る必要があります。

 IT部門内の反発も無視できません。社内プログラマーとして育ったメンバーの多くは、パートナー企業の常駐SEも含めて自社開発やスクラッチ開発に特別な思いやプライドを持っています。ユーザーの要望に合わせて自分たちで作り込める、何かトラブルがあっても自分たちで対応できるという自負を持っています。このためIT部門がパッケージの選択を回避し、スクラッチ開発にかじを切ることは珍しくありません。

 またこうした人たちは、パッケージにネガティブな感情を持っていることがあります。過去にパッケージ導入を経験した人は、使い勝手に難があったり、トラブル対応のたびに費用や時間が掛かったりといった苦い記憶を持っています。「ユーザーのためになるシステムを開発したい」という強い思いがあるために、スクラッチ開発を選択する傾向があるのです。

 しかし今は状況が変わっています。勝見が話すように、グローバル展開されているクラウド型のパッケージで早く、安くシステムを導入するのがトレンドです。IT部門は節約したコストや時間を使って、ユーザーに向き合って業務を効率化したり事業を強化したりすることが求められています。志野物流のケースも、これに当てはまります。

ポイント②
  • クラウド型パッケージ導入のメリットをしっかりと認識する
  • スクラッチ開発がユーザーのためになるとは限らない。むしろ早く安く導入できるパッケージを採用することで、ユーザーと向き合えるようになる