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 今回は、シリーズパラレルハイブリッド車(HEV)を取り上げ、システムの構成や制御について詳しく説明する。

 トヨタ自動車の「プリウス」の例では、エンジンとMG(モーター・ジェネレーター)1、MG2が搭載されている(図1)。2つの駆動システムを最適に動かすため、それらをHEV・ECU(電子制御ユニット)が統合制御している。主電池はニッケル(Ni)水素2次電池で、システム・メイン・リレーや電流センサーなどの電源システム製品は、電気自動車(EV)に採用されているものと同様である。また、12V電池の充電用としてDC-DCコンバーターを搭載することや、エアコン用電動コンプレッサーを採用している点も、EVと同じである。ただし、EVで必要となる充電器は搭載していない。

図1 HEVの構成(プリウスの例)
図1 HEVの構成(プリウスの例)
エンジンと2つのモーター・ジェネレーター(MG1、MG2)を搭載している。(作成:筆者)
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 HEVの制御システムを図2に示す。HEV・ECUは運転者の要求、車両の状態、主電池の充電状態に基づき、エンジンに発生させる出力をエンジン要求出力として、エンジンECUに指令する。HEV・ECUからのエンジン要求出力に従い、エンジンECUは電子制御スロットルの開度を制御する。

図2 HEVの制御システム
図2 HEVの制御システム
HEV・ECUが“司令塔”となって、さまざまな制御を行う。(作成:筆者)
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 また、HEV・ECUはMG1のトルクとMG2のトルクを算出して、MG・ECUにトルク指令値を出す。これを受けて、MG・ECUはインバーターを介してMG1とMG2を制御し、トルク指令値通りの駆動力が出るように制御する。

 一方、電池監視ユニットは主電池の情報(電流・電圧・温度)を取得し、HEV・ECUに送信する。この情報を基にHEV・ECUは主電池の残存容量(SOC:state of charge)を算出し、システムとして最適となるように充電状態を制御する。

 プリウスのようなHEVは減速時にモーターを発電機として動作させ、運動エネルギーを電力に変換して主電池に蓄える。少しでも多くの運動エネルギーを回収するため、摩擦力を使った機械式ブレーキと、発電による回生ブレーキの配分を制御する(図3)。

図3  HEVのブレーキ
図3  HEVのブレーキ
機械式ブレーキと回生ブレーキを併用している。(作成:筆者)
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 電力制御は、主電池の容量を常に監視し、電池のSOCに応じて充電量や放電量を管理する。主電池は、EV走行時のようにモーターを駆動用として使う場合は放電し、回生時のようにモーターを発電機として使う場合は充電される(図4)。SOCが高い場合はEV走行が、より多く可能となり、回生できるエネルギー量は少なくなる。一方、SOCが低い場合はその逆となる。

図4 電力制御の考え方
図4 電力制御の考え方
主電池の残存容量に応じて、充放電の量を制御する。(作成:筆者)
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 主電池のSOCがどのように変化しているかを図5に示す。主電池はSOCが高くなりすぎると過充電という悪影響があり、一方、SOCが低すぎると過放電という悪影響がある。主電池の性能劣化を抑えて長期間の信頼性を確保するには、SOCの利用範囲を制限する必要がある。このため、電流センサーで回生量と放電量を常時把握し、SOCを算出している。Ni水素2次電池を使った一般的なHEVでは、SOCの利用幅を20~40%程度(SOCで40~60%、40~80%)にとどめている。

図5 実走行時のSOC
図5 実走行時のSOC
走行時間に応じて変化する電池の残存容量を示した。(作成:筆者)
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