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 本連載の最後として、カー・エレクトロニクスの将来について述べたい。カー・エレクトロニクスは今後、どのような方向に向かうのであろうか。未来を的確に予測することは難しい。しかし、未来に向かうべき方向を考えることはできる。ここでは、21世紀にあるべき自動車の方向とエレクトロニクスへの期待を考察する。

 カー・エレクトロニクスの変遷と自動車の進化を年表にまとめたのが図1である。20世紀前半から花咲いた120年の歴史を持つ自動車産業において、エレクトロニクスとの関わりはこの30年に集約されており、まだまだ発展の途上にある。

図1 カー・エレクトロニクスの変遷
図1 カー・エレクトロニクスの変遷
自動車とエレクトロニクスとのかかわりは最近30年に集約されており、まだまだ発展途上である。(作成:筆者)
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 1900年以降、米Ford Motor(フォード・モーター)の「T型フォード」に代表される自動車は大量生産の時代に入った。しかし、初期の自動車技術は大半が機械技術と燃焼技術によって発展してきたものであり、エレクトロニクスが関与しないプレ・エレクトロニクスの時代だった。それが、トランジスタとICの開発によって、1970年代以降、大きく変化した。特に、1980年以降はエンジン制御を筆頭にあらゆるシステムに電子技術が使われるようになり、個別のシステムが飛躍的に進化したカー・エレクトロニクス第1幕の時代だった。

 第1幕の時代の自動車は「より速く、より安全に、より快適に」を追求し、その上で「排ガスをできるだけ少なく」を求めてきた。「より速く」でいえばF1レースが代表例であり、車両の性能を競うことが20世紀のクルマ文化の1つでもあった。

 一方、現在はエレクトロニクスの技術進化が、改めて機械技術や燃焼技術の進化を促している。今後は個別システムの高度化という従来の延長線上だけでなく、自動車を取り巻く環境変化への適応が求められている。具体的には、新興国で需要が増える自動車の低コスト化への対応、原油が枯渇することへの対応、二酸化炭素排出量の低減、交通事故による死亡者/負傷者減への対応など、これまでの課題が一層深刻化する。この時代に対して、解決策を見つけていかなければならないのだ。

 さらに、「21世紀のクルマとは何か」という根源的な問いに対して、走行性能や安全性、快適・利便性の進化を社会システムの中で考える時代が到来している。列車との連携を考えたマルチモーダルや、情報通信を駆使したITS(高度道路交通システム)の実用化が本格的に進むことが予想される。従って、こうしたクルマの新しい使い方を想定しながら各システムのニーズを予測し、そこに、進化してきた要素技術の未来形をうまく適合させる必要がある。

 そうした意味で、今後はカー・エレクトロニクスの第2幕が開く時代といえよう。ぶつからないクルマを目指した外部との通信機能の強化、1つの故障が本質的な危険性につながらないための機能安全の実装、超低燃費の実現、電動化などが今後の方向として考えられ、より車両安全の進化が図られるのではないだろうか。