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 ここからは、2020~2030年を見据えた長期的なカー・エレクトロニクスの課題について考えてみる。大きな変化の背景として、燃費向上や燃料問題に加えて、クルマの安全・安心が大きくクローズアップされてくるだろう。「より速く、より安全に、より快適に」というこれまでの自動車に対し、「より安全に、より安心に」の比重が高まっていくと考えられる。その転換期では車内での時間の使い方も含めて、いろいろ変化していくはずである。例えば、現在は運転者が常に周囲に気を配って運転する必要があるが、自動運転レーンが実現すれば、運転しながらくつろげるクルマへと変わるかもしれない。燃費の点でもその方が有利になり、安全性も高められるシーンが見えてくる。

 以下、分野ごとに10~20年後に求められるニーズをまとめた()。

表 長期的なカー・エレクトロニクスの課題
表 長期的なカー・エレクトロニクスの課題
(作成:筆者)
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 [1]エンジン制御では、排ガス規制が一層強化されていく。例えば、過給によるダウンサイジングや、ガソリン・エンジンにおける究極の燃焼と考えられるHCCI(均質予混合圧縮着火)を開発していくことになるだろう。エンジン内部のその場観察と筒内同時着火が必須となり、筒内圧センサやレーザー点火、プラズマ点火の技術が求められる。

 [2]HEVとEVでは、まずはパワー半導体としてGaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)のような高耐圧、大電流駆動素子の実用化が始まるとみられる。また、電池技術のブレークスルーが必要であり、リチウム(Li)イオン2次電池に代わる次世代電池の出現が待たれている。主要な動力源となるモーターでは、逆起電力を抑えた誘導モーターの実用化が期待される。いずれもエレクトロニクスの関連技術であるが、その制御に新しいアルゴリズムが必要になる。

 [3]ボディー制御と走行安全制御、情報系が一体となりながら、安全商品の開発が進化していく。例えば、運転アドバイスやうっかり運転の警告、車両状態の履歴、車載データ・レコーダーの導入などである。

 [4]車両マネジメントでは、機能安全とエネルギー全体を管理するシステムが求められるであろう。そのためにソフトウエアの階層化設計は必須で、HILS(hardware in the loop simulator)やSILS(software in the loop simulator)のような車両全体のシミュレーション技術が不可欠となる。

 [5]遠隔サービスでは、燃費運転支援や準自動運転支援が出始めるだろう。現在ある遠隔セキュリティー技術が進化し、車両の走行状況の監視や、遠隔で運転操作を支援する無人レーンでの誘導といった次世代システムの実用化へと向かう。1990年代はITSへの期待が高まったが、今後はサポートセンターの品質向上によって、このような方向に進化すると思われる。これに伴って、通信品質の格段の向上も必要とされるようになる。

 20世紀末から急進展した通信技術は、まだ進化の途上にある。音声を送る現行の通信網や、データの再送が許される現行のデータ通信網とは格段に異なるレベルの通信技術の開発が必要である。QOS(通信の確度)という確率で信号を保証するのではなく、通信の絶対品質を保証する時代が来て、初めて自動車向けの通信技術が本格的に普及することになる。