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日経FinTech2020年8月号の転載記事となります。

世界的な大手保険会社がイスラエルに殺到し、スタートアップ企業と手を組み始めた。環境変化によって革新を迫られるなか、イノベーションの種を見いだすためだ。日本の損害保険各社も、次々と現地企業との協業や出資を実現させている。

 2020年7月2日、P2P(ピア・ツー・ピア)保険の代表格であるLemonadeがニューヨーク証券取引所への上場を果たした。2015年の創業からわずか5年での快挙だ。同社は2人のイスラエル人が創業したスタートアップ。初値は50.06ドルと公開価格の29ドルを大きく上回り、市場から高い期待を寄せられている。イスラエルにおけるInsurTechの動向を読み解こう。

イスラエルのInsurTechを巡る状況
イスラエルのInsurTechを巡る状況
(出所:Aniwo)
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世界的大手との協業が加速

 多くの業界と同じく、世界中の保険会社がイノベーションを求めてイスラエルに熱い視線を送っている。

 仏AXAは2016年、スタートアップ企業のインキュベーションを目的にKamet Venturesを設立した。ファンドの規模は1億ユーロに上る。イスラエルの著名VC(ベンチャーキャピタル)であるJVPと連携し、InsurTech領域のピッチコンテストを開催、同国スタートアップ企業との協業に乗り出している。海外旅行中に体調不良を起こした際、渡航先の医師や病院とマッチングするサービスを手掛けるAir Doctor、EC(電子商取引)やオンライン旅行予約時の保険販売を簡便にするSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を展開するSetooなどに投資、事業提携を実現した。

 独Allianzは2017年、Lemonadeに出資。2019年には衛星データや気象予報のビッグデータを使ったアンダーライティングを導入したアフリカの農家向けマイクロ保険を提供するOKOとの業務提携に踏み切るなど、積極的に協業を進めている。1997年からイスラエルで保険販売をしてきた米AIGは20周年に当たる2017年、IoT(インターネット・オブ・シングズ)やビッグデータ解析技術の分野でイスラエル企業とのオープンイノベーションを強化すると明言。保険金請求プロセスの効率化を目的にMedinTecのAI(人工知能)を使った保険管理システムを導入している。