世界的に下火となっていたブロックチェーン業界が息を吹き返してきた。イスラエルでは2019年の1年間で関連企業数が32%増加。STO(Security Token Offering)などの分散型金融が次々と実用段階に入っている。
2020年に入り、イスラエルのブロックチェーン業界は再び勢いを取り戻しつつある。もともと同国では2017年にBancorが1億5300万ドル、SIRIN LABSが1億5700万ドルを資金調達するなど、大型のICO(Initial Coin Offering)が相次ぎ、業界が沸き立った。ところが2018年の暗号資産価格暴落と各国の法規制強化というあおりを受け、新規プロジェクト数が激減。一時の盛り上がりに陰りが生じていた。
そんななか反転の原動力になったのが、「DeFi(Decentralized Finance、分散型金融)」である。
2019年に企業数は32%増加
長期的な研究開発を要するブロックチェーン技術を活用したビジネスは世界的な下火に陥っていたが、イスラエル大手経済メディア「Globes」によると2019年12月末時点で、イスラエルでアクティブに活動するブロックチェーン関連企業は150社に上り、2018年末時点の113社から32%増加している。
ブロックチェーンの社会実装を巡っては、スケーラビリティーの問題や一般ユーザーにとって複雑すぎるUX(ユーザー体験)など、依然として多くの課題が残っている。ただ、2019年ごろから、ブロックチェーンの普及を加速させるキラーアプリケーションとしてDeFiへの期待が高まりを見せ始めた。実際、2020年9月1日時点でのEthereumのGas(取引手数料)は過去最高値を更新し、Ethereumの利用が明らかに活発になってきている。
どのようなDeFiスタートアップが、イスラエルで誕生しているのか。いくつかの事例を紹介しよう。
大手各社も開発を推進
Avenewsは、農家を対象とした金融サービスを展開する。同社は、農家の資産やサプライチェーン情報をブロックチェーンに記録し、金融機関と情報を共有することで与信、貸し付け、保険に関する業務プロセスを効率化する。アフリカの大手銀行と提携し、既にサービス展開を進めている状態だ。
QEDITは、ゼロ知識証明の技術を使い、ブロックチェーンにプライベートなレイヤーを追加するソリューションを提供している。組織間取引において機密情報を開示することなくトランザクションを実現できるため、センシティブな情報を扱う金融機関や保険会社での導入が進んでいる。同社に出資する中国Ant Groupと協業しているほか、米VMwareや韓国Samsungとは技術面で提携関係にある。
Spendlは米Visaと手を組み、バーチャルカードを発行、Bitcoinなどの暗号資産をチャージしてオンラインショップで利用できる仕組みを構築した。従来、取引所を経由しなければ利用できなかった暗号資産をクレジットカードのように使えるのが特徴だ。KYC(Know Your Customer)も全てオンラインで完結でき、わずか数分でカード発行が完了する仕組みは、DeFiがキラーアプリケーション足り得る要素を体現していて興味深い。