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日経FinTech2020年4月号の転載記事となります。

POSレジ大手の東芝テックが、データサービスに本格参入する。購買データを武器に小売業者を中心とした事業者の支援に乗り出す計画だ。セルフレジや無人店舗といった小売業界の変革にも積極追随する姿勢をみせる。

 「顧客ごとに相対するチームを置いて、緊密な関係を築いている」。POSレジ大手の東芝テックで商品・マーケティング統括部副統括部長を務める星野芳幸氏は、自社の強みをこう語る。同社が導入するPOSレジは約45万台。シェアは5割を超える。

 接客の最前線で存在感を放つ同社は2020年、データサービス事業に本格参入する意向だ。特に消費者の購買データを活用し、小売業をはじめ様々な事業者を支援することを狙う。消費者の嗜好や動向を分析できる購買データは、デジタル時代における有望な鉱脈の一つ。ただし、幅広く収集できるのは共通ポイント事業者などに限られてきた。東芝テックは独自の方法で新風を吹き込む考えだ。

「スマートレシート」を無償化

 東芝テックはPOSレジを提供しているとはいえ、直接、購買データを入手することはできない。そこで、二つのルートから収集することを想定している。

 一つが、購買データを抱える個々の小売業者から預かる形態だ。個人を特定しない形で活用しなければならないが、小売業との提携を拡大できれば大量のデータを扱えるようになる。

 もう一つが、東芝テックが2014年から提供する電子レシートサービス「スマートレシート」を活用する方法だ。こちらは東芝テック自身で一定規模のユーザー数を獲得する必要があるものの、消費者個人から利用許諾を得るため、個人とひも付けたサービスを展開しやすい。

東芝テックによるデータサービス
東芝テックによるデータサービス
(画像提供:東芝テック)
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 収集ルートによって、東芝テックの戦略は異なる。前者は分析結果を小売業に還元するほか、小売業者の許諾を得た上でメーカーや証券アナリストに提供する考えだ。2020年度上期には第1弾として、メーカーが発行するクーポンでの活用を想定しているという。今後2年間で、140社2000店舗の小売業者と提携することを目指す。

 後者のスマートレシートは、ユーザー拡大に向けて思い切った手を打つ。現在のユーザー数は約23万人。星野氏は「まだ少ない。10倍、20倍の規模にする必要がある」と語る。

 スマートレシートは、消費者向けのスマートフォンアプリ。会計時にホーム画面のバーコードを読み取ってもらえば、電子化されたレシート情報を確認できる。スマートレシートの提携店舗は、アプリにキャンペーンやクーポンを配信できるといったメリットがある。