全2987文字
日経FinTech2020年9月号の転載記事となります。

Protosureは、保険商品の開発・販売プラットフォームを提供している。最大の特徴は、プログラミング不要で商品やプロトタイプを開発できる点だ。既存の保険会社だけでなく、新規参入事業者への導入を狙う。

 「今後、日本でも多岐にわたる種類の保険がリリースされ、一人ひとりが自分に最適な保険を選択できる時代がやって来る。それを支える保険業界の様々なステークホルダーを支援していく」。Protosureの日本代表を務める浅川太貴氏は、このように語る。

 2017年に米国で創業したProtosureは、保険会社のIT部門に在籍していたメンバーが設立した。同社は、クラウド型の保険商品開発・販売プラットフォームを提供している。保険開発に係る開発期間を劇的に短縮できるのが売りだ。米国、日本、香港などの大手損害保険会社や保険代理店、InsurTech企業など6社に対してサービスを提供しており、2020年6月から日本市場に本格参入した。

2週間で試作が可能

 Protosureのプラットフォームにおける最大の特徴は、プログラミング(コーディング)が不要な点である。いわゆる「ノーコード開発」を可能にしているわけだ。Excelを使いこなすスキルさえあれば、代理店や保険査定担当者、アクチュアリー(保険数理士)なども利用できる。浅川氏は、「(JavaScript用のフレームワークである)Reactといった最新のフロントエンド技術を取り入れることで、UI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザー体験)に優れた使い勝手の良い開発環境を実現している」と話す。

 例えば、保険に特化した専用のフォームビルダーを用意しており、契約までの手続きや契約フォームのレイアウトを容易に作成できる。

 フォームビルダー画面は、「ウィジェット」「エディター」「プレビュー」の3つで構成している。ウィジェットには契約フォームを作成するための様々な要素があらかじめ用意されており、エディター上にドラッグ&ドロップすることで契約手続きのステップやレイアウト、テキスト入力欄、チェックボックス、日付入力、ファイルアップロードなどを設定できる。エンドユーザーから見たイメージは、プレビュー機能でリアルタイムに表示される。「レゴを組み立てるようなイメージで自由に、かつ簡単に編集できる」(浅川氏)わけだ。

 手軽に作成できるのは、契約フォームだけではない。保険引受に関するルールを作る場合も、「Excelをある程度操作できれば、誰でも簡単に使いこなせる」と浅川氏は話す。ドロップダウンメニューやExcelと同様の関数などが使用でき、複雑な条件下における契約査定ロジックもGUIで設定する。

 既存の保険料計算エンジンとは、Excelで作った保険料計算シートをアップロードしたり、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を利用したりすることで連携させられる。シンプルな設計の保険商品であれば、Protosureのプラットフォーム上で基本的な保険料計算エンジンを直接構築することも可能だという。

 さらに、保険証書や特約事項、告知事項といった契約に関するドキュメントを作成する機能も準備している。

 Protosureは保険商品の開発だけでなく、販売業務もサポートする。パートナー企業や代理店のWebサイト、EC(電子商取引)サイトなどにカスタマイズされた契約フォームを埋め込む機能を実装しており、見積もりから保険証券の発行に至るまでの販売プロセスをデジタル化し、オンラインでの商品販売を実現できるようにした。

「Protosure」の機能と特徴
「Protosure」の機能と特徴
(出所:Protosureの資料を基に日経FinTech作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 浅川氏は、「半年以上の期間を要していた商品を1カ月でリリースできる。保険商品の開発・販売プロセスが短期間で低コストなものになる」と語る。

 プロトタイプの開発でも威力を発揮する。少額短期保険であれば2週間ほどで形にできるという。Excelを扱えるスキルさえあれば、新しい保険のアイデアを気軽に試せるわけだ。Protosureという社名も、〝プロトタイプ〟に由来している。

 ノーコード開発を実現するサービスは他にもある。ただ、保険商品の開発に特化しているわけではないため、保険契約に特有なバージョン管理への対応が必要だという。Protosureは汎用的な操作性を実現している点が差異化要因になるとする。