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「全体としては、前向きな内容が出てきた印象だ」──。あるキャッシュレス事業者の担当者は、全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が2021年1月14日に公表した報告書について、こう語る。全銀ネットは報告書で、資金移動業者の参加や小口決済システムに関する方針を打ち出した。今後、2つのワーキンググループ(WG)を設置し、詳細を詰める考えだ。
2022年度をめどに、全国銀行データ通信システム(全銀システム)への参加資格を資金移動業者にも拡大する。原則として既存の加盟銀行と同じ条件を課す方針だ。具体的な内容は、全銀ネットの制度WGと金融庁、日本銀行の三者が連携して議論を進める。例えば、清算参加者として直接接続する場合における日銀当座預金の開設や日銀考査の在り方、間接接続でのモニタリング態勢などが焦点になりそうだ。
API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)接続の導入も模索する。中継コンピューター(RC)を活用するこれまでの方法は、新興の資金移動業者には負担が重い。こちらは全銀ネットのシステムWGが主体となって検討する。
一方の小口決済システムについては、大手5行が主導する「ことらプロジェクト」を前提に具体化を進める。2022年度早期の稼働を目指す。J-Debitをベースにしており既に1000以上の金融機関が参加していることや、低コストで構築できる見込みである点を評価したもようだ。
ただし将来的には、ことらプロジェクトが唯一無二の答えというわけではなさそうだ。報告書では「短期的な現実解」としており、2027年の第8次全銀システム構築をターゲットに、継続して検討に取り組む旨が盛り込まれた。